Research Abstract |
ニオブ酸リチウム結晶をレーザー光によって数百MW/cm^2以上で高強度励起すると,光子と格子振動が作るポラリトンを介した誘導ラマン散乱による広帯域テラヘルツ(THz)波発生が起こり,その発振線幅は数百MHz〜数THzの広帯域に及ぶ.このTHz波パラメトリック発生を礎にする従来のTHz波パラメトリック光源は,励起光のパルス幅の制約から大型となるため,励起光源を含むTHz波パラメトリック光源全体としては卓上程度となってしまうばかりでなく,その長パルス励起による非線形光学結晶の熱的損傷閾値がTHz波出力を制限していた. 本研究では,トップハット型の強度分布をもつ短パルスの小型励起光源を用いて光源全体の小型化を図ると共に,熱損傷閾値を緩和し,高強度励起によるTHz波の広帯域化,高出力化を達成した.この励起光源によって,15×20cm^2程度の小型THz波パラメトリック光源から,出力100pJ/pulse以上(尖塔値出力60mW以上),帯域0.9〜3.8THzのTHz波を観測した.また,この小型THz波光源を封筒内の粉体検出に応用することにより,高出力広帯域光源の応用例を示した.さらに,光注入による,狭線幅,広帯域波長可変性を検討した.30mWの連続波半導体レーザーの光を注入したところ,出力は180pJ/pulse以上(尖塔値100mW以上),線幅180GHz以下のTHz波出力が得られた.これはTHz波帯のスペクトルを得るのに十分である.この小型励起光源,非線形光学結晶をベースとするコンパクトなテラヘルツ波光源は,常温動作で操作も簡便であり,テラヘルツ領域における応用研究において有力なツールとなることが期待される.
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