Research Abstract |
GPSに代表される衛星測位システムでは,衛星から送信される擬似ランダム符号や搬送波の位相観測値を用いて,衛星,受信機間の距離を測定(測距)し,受信機座標を求める.従来,受信機単独でその絶対座標を求める手法は「単独測位」と呼ばれ数m程度の誤差を持つとされている.本研究では,この誤差要因を,1.電離層・対流圏の影響,2.衛星の軌道誤差,3.サイクルスリップ,4.移動体の動的モデル,の4つに分類し,その各々についてより正確な数式モデルを構築(GRモデル;GNSS Regression equation)し,観測データからこれらを同時に推定することにより,測位精度の向上を図った.また,サイクルスリップに関しては,測位演算アルゴリズムにおいて使用されるカルマンフィルタのイノベーション過程を監視し,カイ2乗検定,尤度比検定に基づく検出手法を提案した.さらに移動体の動的モデルに関しては,移動体の速度を一次のマルコフ過程,加速度を一次のマルコフ過程,躍度を一次のマルコフ過程と仮定するモデルをそれぞれ構築し,精度の検討を行った.また,測位に用いる衛星の選択手法として,衛星の仰角による重み付け,観測残差の絶対値による衛星選択アルゴリズムを構築し,上述の高精度単独測位アルゴリズムに導入し,測位計算プログラムを実現した.それらの結果,実証実験においては,本学所有のNovAtel社製受信機および国土地理院殿の電子基準点で得られた観測データ等を用い,静止点において常に約50cm程度の精度で受信機座標を得ることが可能であった.
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