Research Abstract |
蛍光偏光度測定法によるタンパク質分子の相互作用測定では,抗原となる低分子量の物質を蛍光標識し,高分子量のタンパク質(抗体)と相互作用する系を作る.分子運動はその大きさに影響を受けるため,蛍光標識した抗原が抗体と結合しない場合は低分子状態が保たれ,運動速度が速いために放射光の偏光が解消され,蛍光偏光度は小さい値を示す.一方、抗体と結合し高分子状態となる場合には,励起状態の間の分子の運動はほとんどなく,放射光は偏光が解消できず、大きな蛍光偏光度を与える. 一般的には,このような蛍光偏光度の測定は,蛍光偏光信号の時間的変化を測定するため,一点を照明し,一点を測定し,測定点を移動しながら測定を行う走査方式で行われる.本手法では,これに対し,微量なサンプルを高集積化したチップ上を作成し,チップ上に集積化されたマイクロスポットを多点同時照明し,また,その点を一度に計測することで,単位時間あたりの測定サンプル数の増大と測定一回あたりのサンプル量の低減を実現し,測定精度,および速度の向上をはかる.本研究では,蛍光偏光度多点同時検出システムを開発するため,計測アルゴリズムの構築,システム開発,マイクロスポット集積化技術の開発等の各要素技術の確立を目指す. 本年度については,19×19μm^2の画素サイズの液晶素子を利用し,各画素にそれぞれ対応して,照明高強度及び偏光方向の制御を可能とするマルチスポット可変照明装置を提案,設計,試作した.また,試作したマルチスポット照明光学装置を用いてスポット毎の照明光偏光制御基礎実験を実施した.液晶画素は20%に縮小され,スポット照明位置においては,1スポットあたりのサイズが4μmの局所照明が実現できる.スポット照明の単位面積あたりの密度は,各スポットの点灯,消灯を液晶により制御すれば0〜6,250,000spot/cm^2の範囲で調整できる.
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