Research Abstract |
本年度は,砂州上での植物繁茂域を予測するために重要となる,裸地砂州への植物の侵入過程に関して現地観測,数値解析により検討を行った.現地観測では,植生の実生の発芽域をGPSで記録するとともに,発芽域,非発芽域での土壌特性,砂州域の冠水特性について検討を行った.観測の結果,植生の発芽域・非発芽域で,表層土壌の粒度分布,有機物・栄養塩量に大きな違いが見られないこと,植生の発芽域は冬季最大出水時の冠水域と良好に一致することが明らかになった.このことから,冬季最大出水時に水散布で植生の種子が裸地域に輸送され,発芽域が決定されることが示された.その後の追跡調査により,発芽した植生が年最大流量の出水時に流出しない場合に,植生の定着が生じることが示された. 上記の現地観測結果に基づいて,植生の侵入・定着に関する数値解析モデルを構築した.モデルでは,まず,平面2次元の浅本流方程式に基づいて冬季最大出水時の冠水域を予測し,その領域を植生の侵入域とした.その後,年最大出水時の洪水流解析を行い,植生の侵入域の中で河床材料の移動が生じなかった箇所を植生の定着域と推測することとした.このモデルを用いて,過去の航空写真より植生の侵入・定着が判読された期間に関する数値解析を実施した.解析の結果は,実際に生じた植生の侵入域を粗い精度ではあるが定性的に再現しており,本モデルにより植生の侵入・定着過程を推測することが可能であることが示された.
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