Research Abstract |
平成17年度は,MARS法を自由表面の解法としたk-ε乱流モデルによる気液2相流の数値計算により,気相と波内部の流速と渦度の分布を算定した.同時に,砂粒を追跡粒子としたPIV法による移動床実験を実施して,砕波形式の相違による砂の浮遊形態と移動速度を詳細に把握した.これらの研究より得られた成果を以下に示す. (1)砂の移動速度と波内部の速度場,および海底形状を関連づけて考察することにより,砂の移動速度の時空間分布特性が明かとなった.すなわち,先行波により浮遊した砂は,戻り流れと同方向に移流する.バーの沖側域では,砂は水粒子よりも大きい速度で沖側の斜め下方向に移動する.そして,波が伝播し岸向きの流れが強まると,砂が水粒子速度よりも速く斜め下方向に移動する領域は,岸方向にバー近傍域まで縮小する.その後,入射波が砕波点に接近すると,バー沖側では水平方向の流れが,バーの影響により流向を岸側斜め上方に変化させる.この約40cm/sの斜め上方向の流れにより,バーの沖側上端部では新たに砂が約20cm/sで浮遊する.さらに,新たに浮遊した砂は,先行波により浮遊した砂と合一する.砕波後,浮遊砂は波内部の流れと同方向に沈降する.(2)固液2相流における浮遊砂の移動速度は,波動運動に伴う水粒子速度と比較すると,その大きさが砂の移動方向によって,異なることが判明した.すなわち,戻り流れと同方向の砂の移動速度は,同領域の水粒子速度と比較して大きい.これは,Trajectory biasingによる沈降速度の増加,および砂の沈降しようとする下向き流速と斜め下方向の戻り流れが強めあうためであると推察できる,一方,斜め上方向の砂の移動速度は,同領域の水粒子速度と比較して小さい.これは,波動運動に伴う斜め上方向の流速と砂が沈降しようとする下向きの流れが弱めあうためであると考えられる.
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