2005 Fiscal Year Annual Research Report
企業行動が交通需要管理施策の推進に与える影響に関する研究
Project/Area Number |
17760434
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Research Institution | Nippon Bunri University |
Principal Investigator |
吉村 充功 日本文理大学, 工学部, 講師 (10369134)
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Keywords | 交通需要マネージメント / 通勤手当 / 企業行動 / モデル化 |
Research Abstract |
近年、通勤交通混雑を軽減する交通需要管理(TDM)施策の新たな取り組みとして、都市内の有料道路を活用した社会実験が実施され、その成果が注目されている。しかしながら、日本社会では多くの場合通勤費用を企業が負担しており、通勤行動の変化は必ずしも通勤者自体の意志では決定していない。そのため、これまでの通勤者のみの意志決定を前提とした交通計画では、期待する効果が十分得られない可能性がある。 本研究では、まず2004年に大分都市圏で実施された有料道路社会実験の利用者アンケートなどを基に、社会実験の効果と問題点を明らかにした。本社会実験は、「大野川大橋有料道路」などの通勤・帰宅時の料金を半額にすることにより並行する一般道の混雑緩和がどの程度なされるかを検証することを目的に実施されている。利用者アンケートの分析結果より、社会実験により感じている効果として、「料金負担の減少」という直接的な金銭効果、渋滞緩和による「走行中のイライラの軽減」といった安全面での効果が大きいことを明らかにした。一方で、悪影響を感じている人は少なかったが、一部では「通勤手当が減った」という回答があり、通行料金の変更は、利用者行動だけでなく、企業行動の変化をもたらす可能性があることを明らかに、本研究の問題意識を裏付ける結果となった。 今後、TDM施策の実施により企業が通勤補助制度を変更するインセンティブや、それに伴う通勤者の行動変化を明示的に取り込んだ企業の最適化行動モデルや、社会的厚生水準最大化モデルを作成する。その準備として、本年度は道路と鉄道の2交通手段が利用できる一次元空間上の都市を対象に、無課金状態、道路通勤者に対してコードンプライシングを実施した状態、鉄道通勤者に乗車区間に応じた混雑料金課金を実施した状態(システム最適)の各ケースにおける社会的総費用を最小化するモデルを作成し、最適な料金設定の条件を導出した。
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