2005 Fiscal Year Annual Research Report
天然有機物(NOM)共存下における芳香族化合物等の塩素処理反応機構の解明
Project/Area Number |
17760444
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Research Institution | National Institute of Public Health |
Principal Investigator |
小坂 浩司 国立保健医療科学院, 水道工学部, 研究員 (60370946)
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Keywords | 塩素処理 / 多環芳香族炭化水素 / 反応速度 / 反応生成物 |
Research Abstract |
多環芳香族炭化水素の一つであるピレンを対象に、その塩素処理性について検討を行った。pH7.1において、塩素濃度が同じ場合、ピレンの分解速度はピレン濃度が低い場合でより大きかった。この結果より、中性付近では、塩素処理において、ピレンは次亜塩素酸以外の酸化剤によっても分解されていることが示された。また、pH7〜10の範囲において、ピレン濃度および塩素濃度が同じ場合、ピレンの分解速度は大きくは変わらなかった。次亜塩素酸のpKaは7.5であること、概して、有機物の塩素との反応性は次亜塩素酸の形態の方が次亜塩素酸イオンの形態よりも速やかであることから、pHの影響も、塩素処理においてピレンは次亜塩素酸以外の物質によっても分解されていることを示していると言える。また、ラジカル捕捉剤であるtert-buthanol(TBA)共存下の場合、塩素処理におけるピレンの分解速度は大きく低下したことから、ピレン分解に関与している酸化剤はラジカル種の可能性があると示唆された。しかし、TBA共存下においても、ピレン濃度が低い場合の方がピレンの分解速度が大きかったため、反応に関与している酸化剤は複数存在していることが示唆された。 ピレンをpH7.1で塩素処理を行い、試料を固相濃縮し、LC/MS/APPI法、GC/MS法およびNMR法によりピレンの塩素反応生成物の同定を行った。その結果、反応生成物として、ピレン-4,5-ジオン、1-クロロピレン、1,8-ジクロロピレン、1,6-ジクロロピレンを同定した。この結果から、中性付近において、塩素処理によるピレンの分解は塩素化と酸化の両方から進んでいることが示された。また、ピレン-4,5-ジオンについて、アリル炭化水素結合(AhR)活性の評価を行ったところ、ピレンより若干小さいが、活性を示す物質であることがわかった。
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