2006 Fiscal Year Annual Research Report
米国ダウンタウンの歴史的地区における他役権保全プログラムに関する研究
Project/Area Number |
17760485
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Research Institution | Kanazawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
遠藤 新 金沢工業大学, 環境・建築学部, 講師 (40292891)
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Keywords | 地役権保全プログラム / 歴史的建造物 / 民間非営利組織 / 税控除 / シンジケート組織 |
Research Abstract |
今年度は、米国内でも比較的古い歴史を持つがゆえに歴史的地区が多数存在する北東部の都市を対象に、歴史的建造物の修復保全に際して地役権保全プログラム制度(HCEP制度)が実際にどのように活用されてきたのかを調査した。ペンシルバニア州フィラデルフィアでは、都心の代表的な歴史的地区であるオールドシティ地区(旧居留地)の修復再生が検討され始めた1980年代初頭にHCEP制度を用いて地区全体の歴史的建造物ファサードの修復を検討していた事実が明らかになり、同制度を適用して修復保全している建物の存在と現存状況を確認してきた。但し、ペンシルベニア州内を広く見るとHCEP制度を用いた歴史的建造物の修復は特定の歴史地区に偏在するのではなく都市圏内に広く分散している。これは、HCEP制度の活用を促進するために、特定地区で活動するNPO組織ではなくPreservation Alliance for Greater Philadelphiaという都市圏全域を活動範囲とする組織が技術支援を行っているためである事が分かった。次に、ロードアイランド州プロビデンスでは、都心の歴史的地区(ダウンシティ地区)におけるHCEP制度の活用動向を調査した。その結果、同地区では歴史的建造物の修復活用事業が近年進んでいるが、同制度よりも民間財団が運用しているファサード修復基金が実際の修復整備には用いられており、HCEPが活用機会を得られていない実態が明らかになった。以上の調査および昨年度までの分析結果を踏まえると、HCEPの使われ方には特定の歴史的市街地で集中的に使われている場合と、都市圏全体に適用物件が分散している場合という二っの傾向があると言える。制度黎明期の1980年代は、歴史的建物を修復するための財源が限られていたためにHCEPが選択肢の一つとして検討されていたが、時間経過の中で使い勝手の良いファサード修復基金等が標準的手法として適用され、HCEPは特定の条件を満たす地域において戦略的に用いられる手法として定着していったと考えられる。
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