2006 Fiscal Year Annual Research Report
平面分析と空間利用調査による痴呆性高齢者グループホームの計画に関する研究
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17760500
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Research Institution | Miyagi Gakuin Women's University |
Principal Investigator |
厳 爽 宮城学院女子大学, 学芸学部・生活文化学科, 准教授 (60382678)
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Keywords | 建築設計 / 平面計画 / 基礎的研究 / 認知症高齢者 / ケア環境のあり方 / 一般像 / 全国 |
Research Abstract |
今年度の調査は前年度に実施した「宮城県における認知症高齢者グループホームの平面構成に関するアンケート調査」の結果に基づいて、アンケートの見直しを行った。その上で、全国認知症高齢者グループホーム協会の協力を得て、会員1753ホームを対象に、施設平面図の依頼を含めたアンケート調査を2006年5月(北海道・石川県、146ホーム)、2006年7月(14都道府県、531ホーム)、2006年8月(30都道府県、998ホーム)の4期にわたって行った。そのうち499ホームより回答を得た(回収率は28.8%)。また、420ホームより平面図が提供された。 回収されたアンケートを元に、延べ床面積、立地等の施設概要および入居者の性別、年齢等の属性分析を行い。我が国のグループホームの一般像を把握することができた。また、平面図を元に、グループホーム空間における現状と課題を以下のように明らかにすることができた。 1.共用空間における入居者の滞在場所について、多くの場合は居間・食堂に限られていることが分かった。入居者に「居室に一人でいる」か「共用空間に大勢でいる」かの2択しか与えられていない現状の空間のつくりかたに対して、共用空間の中でも「個」を重視した滞在ができる空間的な工夫が必要である。 2.居室については、最低限の生活空間しか保証されておらず、多くの場合寝室としての機能しか果たしていない。日中でも過ごせる生活の場としての「居室」環境が構築されていないのが現実である。また、現行の最低面積基準では、独立した生活空間として洗面・トイレや収納を設けることは物理上困難な状況にある。 3.スタッフの見守りが重視されて計画される傾向があり、入居者の視点から必要とされる「空間的連続性」が、スタッフの視点としての「スタッフの見通しのよさ」として解釈され、計画に反映されてしまう傾向がある。共用空間と居室との間に音や気配などを通して連続性を持たせることが、今後の計画上の課題となる。 4.設備的な面では、共用トイレの数が少ない十分でない計画が少なくない。また、入居者の生活行為を誘発するための重要な空間要素である台所の計画においては、「入居者がアプローチしやすい配置」といった視点が欠けている事例が多く、電磁調理器の導入などによって、アイランド型対面式台所の実現を可能にするなどの工夫が必要である。さらに、浴室面積、浴槽の形など入浴介助に関わる点では、入居者の重度化に対応が難しいである事例が多いことも現状から明らかになった。 5.豊かな共用空間の実現、個室の「居室」としての整備、ターミナルケアまで視野に入れた場の計画実現のためには、現行の計画水準を大幅に見直す必要があると思われる。
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Research Products
(4 results)