2006 Fiscal Year Annual Research Report
極微歪空間を利用した負の熱膨張物質のダイナミクスの研究
Project/Area Number |
17760538
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
山村 泰久 筑波大学, 大学院数理物質科学研究科, 講師 (80303337)
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Keywords | 熱膨張 / 熱容量 / フォノン / 負の熱膨張 / 熱収縮 |
Research Abstract |
「負の熱膨張」を示すZrW_2O_8関連化合物が注目を集めているが,材料として最も需要の高いZrW_2O_8の高温相における「負の熱膨張の発現機構」については未だ研究が進んでいない.この負の熱膨張物質ZrW_2O_8の高温相におけるダイナミクスを明らかにすることが本研究の主たる目的である.3価の陽イオンでZr^<4+>サイトが置換されたZrW_2O_8固溶体では,本来のZrW_2O_8の相転移温度よりはるかに低い温度域でも高温相の構造を極微空間として保持できる.この特性を用いて,ZrW_2O_8固溶体の低温領域における精密な熱容量から極微構造由来のフォノンスペクトルを求め,ZrW_2O_8の高温相におけるダイナミクスを検討した.さらに,他の物質との比較を行い,負の熱膨張物質全般のダイナミクスについて理解することを目指した. 負の熱膨張物質ZrW_2O_8のZr^<4+>の一部を3価陽イオン(Sc^<3+>, Lu^<3+>)で置換した固溶体の低温領域における熱容量測定を行った.いずれの固溶体でも10K付近に熱容量の増大が見られた.この熱容量の大きさの変化は置換量および置換した陽イオン種に依存することがわかった.比較のため,HfW_2O_8系の固溶体の検討も行った. 昨年度発見した固溶体の低エネルギー励起を検討し,高温相におけるフォノン状態密度分布の詳細を明らかにするため,固溶体中に共存する低温相と高温相の寄与を独立に解析する方法を新規に開発した.この手法により,ZrW_2O_8の高温相には低温相に見られない低エネルギーフォノンが存在することが明らかとなった.さらに,高温相の状態密度分布に,結晶格子の収縮によると考えられるフォノンの状態密度分布の変化を初めて見出した.これらの結果により,本研究の目的である負の熱膨張物質ZrW_2O_8の高温相のダイナミクスを理解する基礎を構築することができた.
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Research Products
(1 results)