2005 Fiscal Year Annual Research Report
単一グレイン有機薄膜トランジスタの形成技術と電気伝導機構に関する研究
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17760559
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西村 知紀 東京大学, 大学院・工学系研究科, 技術職員 (10396781)
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Keywords | 半導体物性 / 有機半導体 |
Research Abstract |
有機トランジスタの動作極性は一般的に材料によると考えられていた。しかし、トランジスタの動作原理についてあまり理解されていないことからも、まずはキャリアの注入メカニズムの解明を試みた。有機半導体材料(p型動作をするペンタセン、n型動作をするフッ素化ペンタセン)のLUMO-HOMO準位とソース、ドレインに使用するメタルの仕事関数の関係とデバイスの電流特性にある法則性をもって変化することが分かった。これらはソースからのキャリアの注入時に、メタルのフェルミ準位からキャリアがホールの場合はHOMOに対する障壁高さ、電子の場合はLUMOに対する障壁の高さに依存しており、メタルのフェルミ準位と有機半導体のHOMO、もしくはLUMOとのエネルギーの位置関係により障壁が低い程良好なトランジスタ動作を示す形で非常にうまく説明することができる。これらより有機半導体へのトランジスタ動作に関わるキャリアの注入はメタルの仕事関数と有機半導体のHOMO-LUMO準位のバンドアライメントにより決まることが示された。 また半導体の劣化メカニズムについて評価を行った。特に今回はn型動作をするフッ素化ペンタセンについての調査を行った。酸素雰囲気下で著しい閾値電圧の減少と飽和電流値の低下を示し、加熱により特性の若干の回復がみられた。劣化については正確には酸素雰囲気下でゲート電圧を印加することで生じていることがわかった。即ち重要な点は酸素雰囲気とゲート電圧の印加が揃って初めて劣化を示す点である。これらはキャリアの注入による効果か、電界の印加効果かの区別が現在はできていないが、それらの解明は今後の課題である。
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