Research Abstract |
貴金属基金属ガラスは,貴金属が有する生体適合性・耐薬品性・耐酸化性等の特性が期待され,生体用MEMSやμ-TASへの応用が望める.本研究では,安価であるIrやRuをベースとした,Ir基及びRu基合金ライブラリをコンビナトリアルアークプラズマ法により製作し,金属ガラスとなる組成探査行い,薄膜金属ガラスの物性値を測定すること目的とする. 本年度はIrやRuが高融点材料であることから,アークプラズマ法による高融点材料の成膜の基礎的知見を得るため,同じ高融点材料であるMoをベースとしたMo合金ライブラリを製作し,Mo基アモルファス合金薄膜の探査及び物性評価をした.その結果,アークプラズマ法の安定性の向上や成膜レートの向上等の知見が得られた. Mo合金探査から得られた知見を元に,3種類のIr基合金ライブラリと5種類のRu基合金ライブラリを製作し評価を行った.すべての合金ライブラリ上でアモルファスになる組成領域を見出した.そのうち,Ru-Zr-Al合金系で,スパッタ法によるアモルファス薄膜の成膜を行い,その物性値を評価した.Ru_<75>Zr_<24>Al_1スパッタ薄膜で過冷却液体を示し,そのガラス転移温度は,902K,結晶化温度は973K,過冷却液体域は71Kであった.また,この試料の機械的特性は,これまでにMEMS材料として知られている他の貴金属基薄膜金属ガラスよりも優れており,破断応力1.9GPa,弾性限界2.1%,ヤング率は97GPaであり,RuZrAl薄膜金属ガラスのMEMSへの応用が期待できる. 以上のことから,初めてコンビナトリアルアークプラズマ法により,薄膜金属ガラスの組成探査に成功した.
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