2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17760594
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
柳楽 知也 大阪大学, 大学院・工学研究科, 助手 (00379124)
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Keywords | 強磁場 / 圧電材料 / 結晶配向 / 高分子 |
Research Abstract |
本研究では、非磁性である高分子材料を溶融状態において強磁場を印加することにより、結晶が一方向に配向した成形体の作製を試みた。今回対象とした材料は、圧電性を示すPBLG(ポリベンジルL-グルタメート)およびPVDF(ポリフッ化ビニリデン)であり、後者は強誘電性であるため優れた圧電特性を示す。溶液中で強磁場を印加して結晶を配向させるには、固相が容易に回転・移動できる環境を作ることが重要である。そこで、最初に示差走査熱量計(DSC)により、半溶融状態となる固液共存領域の温度範囲を調べた。次に、その温度範囲で10Tの磁場を8時間印加し、溶媒であるN-ジメチルホルムアミドを蒸発させ、成形体を作製した。PBLGの場合、10Tの強磁場を印加することにより、X線回折リングに濃淡が観察され、(a00)面の法線が磁場印加方向と一致する傾向が見られ、結晶が配向した組織が得られた。一方、同じ実験条件においてPVDFについて結晶配向した組織の作製を試みたが、優位な結晶方位は観察されなかった。結晶化促進剤であるタルクを添加した場合も同様の結果であった。PVDFの分子量は約10万、PBLGの分子量は約1万〜3万であるため、複雑に絡み合った分子鎖を解いて回転・移動するには不利である。したがって、本実験条件では粘性をうまく制御できなかった点が、PVDFの結晶配向化を達成できなかった原因であると考えられる。また、PBLGの分子構造中には、PVDFには存在しないベンゼン環を有し、結晶磁気異方性が大きいと考えられるため、今回の実験条件下においても配向組織が得られたと言える。溶液中の粘性を下げること、結晶磁気異方性の高い分子構造をもつ材料を選択することが磁場による結晶配向にとって有効であることが明らかとなった。
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