2005 Fiscal Year Annual Research Report
石油廃棄物を利用する光化学的有機合成プロセスの開発
Project/Area Number |
17760608
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
白石 康浩 大阪大学, 太陽エネルギー化学研究センター, 助教授 (70343259)
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Keywords | 石油廃棄物 / 光化学反応 / 有機合成 / スルホニウム塩 / 重合開始剤 / エポキシド / 開環重合 / 硫黄化合物 |
Research Abstract |
本研究は、石油燃料の脱硫により得られた廃棄物(スルホニウム塩)を光機能性材料として用いる新規有機合成法を実現することを目的とする。平成17年度は、スルホニウム塩を用いるエポキシドの光化学的開環重合反応について検討した。 本反応は、スルホニウム塩からのアルキル基の光化学的脱離を開始反応とするエポキシドからの高分子合成反応である。従来用いられているスルホニウム塩は合成が複雑であり、かつ高価であるなどの問題を有する。本研究では、軽油の脱硫により得られたスルホニウム塩を開始剤として用いた。原油の直接脱硫により得られた直留軽油、および残油の接触分解により得られた接触分解軽油を対象油とした。これらの軽油の脱硫により得られたスルホニウム塩は、光照射下(λ>320nm)でグリシジルフェニルエーテル(GPE)の開環重合を速やかに進行させた。得られたポリマーには、光分解による構造の崩壊などは見られなかった。また、その活性は、ジベンゾチオフェンやベンゾチオフェンなどの純試薬のスルホニウム塩よりも高いことが分かった。アルキル基の脱離しやすさ(重合開始活性)は、スルホニウム塩の励起されやすさや硫黄原子の求核性に左右される。軽油の脱硫により得られたスルホニウム塩は、電子供与性のアルキル基を骨格に多数有するため大きな吸収をもつ。また、分子軌道計算により、これらの化合物の硫黄原子の電子密度は低く、アルキル基を脱離させやすいことが分かった。これが軽油より得られたスルホニウム塩の活性の高い原因である。また、活性は直留軽油より得られたスルホニウム塩の方が高いことが分かった。直留軽油より得られたスルホニウム塩は大きな吸収を有するジベンゾチオフェン類から構成されているため、よりアルキル基を脱離しやすいことによる。したがって、ジベンゾチオフェン類を多く含有する軽油を原料として得られたスルホニウム塩が重合開始剤として適していることが示唆された。これらの研究成果は、論文として投稿中である。
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