Research Abstract |
昨年度までの研究から,メソ多孔質アルミノシリケートの細孔壁を原料として,部分的なゼオライト構造を構築させることに成功した。本年度着目した点は,酸性質発現のメカニズムである。上記方法では気相よりゼオライトへの構造指向剤を供給し結晶化を促進している。この構造指向剤を変化させることで,様々なゼオライト構造が得られる。よって本研究では,それぞれ構造指向剤を用いて,どのようなゼオライトが合成可能か検討した。一方,ゼオライトの大きな特徴は上記固体酸性質とともに均質な分子レベルのミクロ細孔が開孔している点にある。そこで,上記結晶成長法を利用して,メソ細孔壁にミクロポケットを作製し,分子認識ミクロ細孔を開けることを試みた。 気相から供給可能なアミン類を用いることで,MFI, MOR, MWWといった工業的に実用化されている重要なゼオライト郡がメソ多孔体から作成できることを確認した。また,蒸気圧の低い4級アンモニウム塩を用いると,BEA, MFI, MELといった細孔径および構造が異なるゼオライト群を作り分けることができた。またビルディングユニットまでで結晶成長を止め,ゼオライトの酸性質とメソ多孔質のコンポジット材料となることがわかった。 上記により得られた強酸性質およびミクロポケットによって,ミクロ-メソヒエラルキカル細孔ネットワーク構造を実現するだけでなく,分子サイズを認識して働く吸着剤,触媒として適用し,分子サイズに高選択的な分子認識材料としての有効性を検討した。本研究では,アンモニアあるいはトルエン分子吸着実験によって,酸点周りの環境整備および酸点周りのミクロ空間の形成を経時的に追跡した。ゼオライトのような強酸性質が発現した後にミクロポケットなどミクロ構造が構築されることが明らかとなった。その結果,芳香族分子に選択的な吸着剤の開発可能性が示された。
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