2005 Fiscal Year Annual Research Report
核融合炉第一壁で用いられる炭化ケイ素中での水素同位体挙動の解明とその体系化
Project/Area Number |
17760663
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大矢 恭久 東京大学, アイソトープ総合センター, 助手 (80334291)
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Keywords | 水素同位体 / ヘリウム / 炭化ケイ素 / X線光電子分光法 / 昇温脱離法 / 核融合 |
Research Abstract |
核融合環境に近い環境における炭化ケイ素材料中での水素同位体の化学的挙動を解明するために、高エネルギー重水素イオン照射およびヘリウムイオン照射の順序を変え、ヘリウムイオン照射による重水素滞留・放出過程の解明をX線光電子分光法および昇温脱離法を用いて行った。 室温において重水素イオンのみを飽和量まで照射すると、重水素は炭化ケイ素中のケイ素および炭素に捕捉されるが重水素イオンを飽和量まで照射した後にヘリウムイオンを同量照射するとケイ素に捕捉された重水素のみが照射初期においてヘリウムイオンと相互作用して脱離し、炭化ケイ素中での重水素の滞留量は減少することが明らかとなった。また、これらの照射実験後の加熱実験の結果、約1000Kまで加熱することにより、ほとんどの炭化ケイ素構造は修復されるが、さらに過熱することで重水素およびヘリウムイオン照射によって炭化ケイ素材料内部で生成した炭素が試料表面に偏析した。このことは炭化ケイ素材料が核融合炉第一壁やトリチウム増殖材料と構造材料との間の挿入材として利用するイオン照射環境により炭素がプラズマまたは増殖材料中に不純物として混入する可能性を示唆している。また、照射温度を室温から900Kまで変化させると、800Kまでは重水素の滞留量はヘリウムイオン照射に大きく影響を受け、減少するが、900Kではヘリウムイオン照射による影響をほとんど受けないことから、900K以上の照射環境ではヘリウムの滞留が大幅に低減されると共に、イオン照射により生成する損傷構造が大幅に修復されている可能性が示唆された。
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