2005 Fiscal Year Annual Research Report
原子炉ステンレス鋼の応力腐食割れにおける照射欠陥・超微小析出物偏析の効果
Project/Area Number |
17760676
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
畠山 賢彦 東北大学, 金属材料研究所, 助手 (30375109)
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Keywords | 原子炉シュラウド / 照射誘起偏析 |
Research Abstract |
SUS316L鋼を1050℃1時間焼鈍後、氷水焼き入れした試料及び、その後700℃、100時間焼鈍し、鋭敏化熱処理した試料について3次元アトムプローブ測定を行った。焼き入れ材については結晶粒界近傍の測定に成功した。焼き入れ材、鋭敏化熱処理材ともに、結晶の粒内では溶質原子の偏析や析出は見られなかった。一方、粒界近傍では、粒界に沿って合金元素や不純物の濃度変化が観察された。粒界近傍ではCr,Mo,Bの濃度が高く、Ni濃度が低いことが分かった。Moは母相中での平均濃度が3.5at.%程度であるのに対し、粒界では7at.%と二倍の濃度であった。Ni,Crといった合金元素は母相中での濃度ゆらぎが5at.%程あるが、粒界近傍ではNiについて2at.%の濃度低下、Crについては4at.%の濃度上昇が見られた。濃度変化の見られる粒界付近の領域の幅は約3nmと狭いことが分かった。粒界のごく近傍ではFeに対してオーバーサイズのMo,Crが焼鈍時に拡散して濃化し、一方アンダーサイズのNiが粒内に向かって拡散したと思われる。MnはFeとほぼ同じ原子半径であるが粒界での濃度低下が見られた。これは濃化したオーバーサイズ原子に対してMnが相対的に小さいためと思われる。不純物原子に関しては、炭素の場合、粒界と粒内で有意な濃度変化がなかったが、Bの場合粒界での濃度が著しく高い結果であった。母相の分析においてBはバックグラウンド程度しか検出しておらず、非常に低濃度で含まれているものがほぼ全て粒界に存在しているものと思われる。プロトン照射試料については表面近傍の粒界を3次元アトムプローブ測定するための微細加工技術を確立した。
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