2005 Fiscal Year Annual Research Report
時間分解型蛍光分光法と量子化学計算による極低濃度TRU核種の錯形成機構解明
Project/Area Number |
17760677
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
虎石 貴 東京大学, 大学院・工学系研究科, 助手 (40376497)
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Keywords | アクチニド / TRU核種 / 時間分解型蛍光分光法 / 極低濃度 / 錯形成 / 量子化学計算 / 複核錯体 / 溶液化学 |
Research Abstract |
本年度は、極低濃度領域におけるTRU核種の錯体構造解明のために、発光分光、量子化学計算および核磁気共鳴分光法による複核錯体形成の評価法を確立した.TRU元素の中でも配位の自由度が高く、多様な多核錯体形成が知られる3価アクチノイドのモデル物質としてのTb(III),Eu(III)を対象とした.また、天然有機物質の部分骨格の中でも、カテコール、脂肪酸および、サリチル酸様部位は多核錯体を生成する可能性のある代表的な部位であることがわかっているため、サリチル酸および誘導体のスルホサリチル酸を部分骨格のモデル配位子として使用した スルホサリチル酸-Tb(III)間のエネルギー移動を通じて効率的に金属に電子を導入し、極低濃度における金属からの蛍光発光の観測を行った。Tb(III)からの蛍光発光が錯形成によって増強されるという特性を溶液平衡化学の知識と組み合わせて、蛍光スペクトルの配位子濃度やpH依存性から、系の化学量論比を決定するとともに、重、軽水中での蛍光寿命の違いによる第一水和圏の水和数決定を通じ、配位水を明示的に含んだ錯体の化学量論比の決定手法を確立した.その結果、スルホサリチル酸と3価ランタノイドは中性-アルカリ性領域において2核の複核錯体を生成することを明らかにした。また核磁気共鳴法による構造解析から、その複核錯体は配位子による架橋を有していること、および架橋となる配位子とその他の配位子との溶液内における交換速度が異なることを明らかにした。さらに量子化学計算により、サリチル酸-3価ランタノイド錯体の溶液内での構造を明らかにした.その結果、錯体の溶液内における構造には官能基周辺の溶媒和効果が大きく寄与していることを明らかにした。
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