2005 Fiscal Year Annual Research Report
高性能中性子マイクロベンダーの開発と曲面中性子光学系の評価
Project/Area Number |
17760681
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
日野 正裕 京都大学, 原子炉実験所, 助教授 (70314292)
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Keywords | 中性子光学 / 多層膜 / 中性子反射鏡 / 偏極中性子 |
Research Abstract |
中性子ビームを高い効率で試料まで導く素子を開発することは非常に重要な課題である。多層膜ミラーは、中性子に対して有効ポテンシャルが大きく異なる2種類の物質を積層し周期ポテンシャルを作る。スーパーミラーはその周期ポテンシャルの周期dを少しずつ変えることで広い角度範囲で全反射できるようにしたものである。スーパーミラーの性能は一般的に「実効臨界角」と「立ち上がりの反射率」で評価できる。「実効臨界角」とは反射角の一番大きな部分で、ニッケルの全反射臨界角のm倍という意味で、mQcという言い方をすることが多い。「立ち上がり反射率」とは、その最大の臨界角での反射率である。つまり、mが大きく、立ち上がりの反射率が1に近いほど性能の良いスーパーミラーとなる。さらに磁性体を用いて、中性子の磁気散乱ポテンシャルを制御することにより、反射・透過を用いて中性子のスピン状態を選別する偏極素子として使用できる。従来は3.6Qcが最高の偏極スーパーミラーであったが、我々は3.8Qcで立ち上がりの反射率0.6程度、偏極率0.95のFeCo/V多層膜スーパーミラーの開発に成功した。しかし、この性能を出すには1Tという非常に大きな外部磁場が必要であった。つまり蒸着法はもちろん、現在市販されているマグネトロンスパッタ法と比較したミラーと比較しても京大炉のIBSで作成したミラーは磁性的に非常に硬くなってしまった。しかし今回Feのターゲットを工夫することで、一般的な使用が可能な外部磁場45mTで機能する、世界最高性能の4Qc Fe/Si、5Qc Fe/Ge多層膜偏極中性子スーパーミラーの開発に成功した。
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