2006 Fiscal Year Annual Research Report
複製期におけるヘテロクロマチン構造の制御に関与する分裂酵母mcllの機能解析
Project/Area Number |
17770008
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
筒井 康博 国立遺伝学研究所, 分子遺伝研究系, 助手 (00390625)
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Keywords | ヘテロクロマチンの維持 / 転写サイレンシング / キネトコア領域 / DNA複製 / DNAポリメラーゼα / 分裂酵母 |
Research Abstract |
分裂酵母において、セントロメア、接合型決定領域、テロメアの領域はヘテロクロマチンを形成しており、これらの領域ではSwi6(ショウジョウバエのHP1ホモログ)が局在し、染色体の正確な分配や遺伝子の発現制御に重要であることが知られている。我々は、分裂酵母Mcl1がDNA複製に加えて、ヘテロクロマチンの維持に関与することを明らかにしていたため、本研究ではヘテロクロマチン維持の役割に注目して解析を開始した。平成17年度の解析から、Mcl1及びMcl1と複合体を形成するDNAポリメラーゼα(Polα)がSwi6非依存的にヘテロクロマチンの維持に働くことを示唆する結果を得ている。平成18年度はセントロメアにより重点を置いて次のような結果を得た。 分裂酵母セントロメアは、他の高等真核生物と同様に、キネトコア領域とその両端に位置するヘテロクロマチンから構成されている。キネトコア領域ではヒストンH3バリアントであるCENP-Aがヌクレオソームに取り込まれており、この領域も転写サイレンシングされることが知られている。mcl1変異株はセントロメアヘテロクロマチンの転写サイレンシングに欠損を示すためキネトコア領域についても調べたところ、転写サイレンシング欠損が観察された。さらに、ChIP法でCENP-Aの局在量が減少していることを見出したごPolαの変異株でも同様の結果を得た。従って、昨年度の解析と併せて、Mcl1及びPolαはセントロメアクロマチン構造の維持に関わることが明らかとなった。興味深いことに、キネトコア領域、ヘテロクロマチン領域のいずれもヒストンH4は低アセチル化状態に通常保たれているが、mcl1変異株においてはどちらの領域においてもアセチル化状態が亢進していることが分かった。こうしたことから、Mcl1は複製期に何らかのヒストン脱アセチル化酵素を制御しセントロメアの低アセチル化状態を保っことで、セントロメアクロマチン構造の維持に関わるというモデルが考えられた。
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