2005 Fiscal Year Annual Research Report
アリ-アブラムシ共生関係の緊密レベルと遺伝的多様度減少のトレードオフの検証
Project/Area Number |
17770010
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
八尾 泉 北海道大学, 大学院・理学研究科, 学術研究員 (70374204)
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Keywords | アリ / アブラムシ / 共生関係 / 分子系統樹 / 体色 / コロニー形態 |
Research Abstract |
Tuberculatus属のアブラムシは、アリと必須共生、任意共生そして共生しない種を含んでおり、共生関係の多様性と進化を理解するために適当な材料である。Tuberculatus属アブラムシ13種を対象に3つのミトコンドリア領域(COI, ND1, ND4, 合計1242bp)と核のEF1α(438bp)から分子系統樹を作成し、共生関係のレベルのマッピングを行った。またアブラムシのコロニー形態や成虫時の体色についてもアリ随伴との関連性を調べた。その結果、必須共生の3種が単系統を形成し、強固な関係が1回だけ進化していることが示された。必須/任意共生ともにアブラムシのコロニー形態は集合性を示し、共生しない種はまばらなコロニーを形成していた。また必須/任意共生種のアブラムシ成虫は体色が濃くなる傾向を示したのに対し、共生しない種の大部分は薄い体色を呈していた。薄い体色は葉裏において隠蔽色となっている可能性も考えられるが、人と昆虫の色覚は異なるので実験的な検証が必要である。一方、コロニー形態に関しては2つの仮説が考えられる。一つは、アブラムシによる集団吸汁効果である。アブラムシがおよそ20匹前後になると単独で飼育するよりも1匹あたりの体サイズが大きくなることが知られている。体サイズが大きくなることは甘露生産の増大につながり、これがアリにとっても効率的な採餌をもたらすことになると考えられる。もう一つは、アリ随伴のコストの軽減である。アリ随伴型アブラムシの甘露生産にはコストがかかっていることが先の研究で明らかになっているが、集団を形成することにより1匹あたりのアリ随伴のコろトが軽減されると考えられる。これらのことがアリ随伴型アブラムシのコロニー形態は密集する傾向にあると示唆される。
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