2006 Fiscal Year Annual Research Report
シロアリにおけるコロニーの遺伝的多様性と病気に対する抵抗性の関係分析
Project/Area Number |
17770016
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
松浦 健二 岡山大学, 大学院環境学研究科, 助手 (40379821)
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Keywords | シロアリ / 血縁度 / 遺伝的多様性 / 感受性 / 耐病性 / 血縁対立 / コロニー融合 |
Research Abstract |
社会性昆虫では、同じような遺伝子型の血縁個体が密集して生活しているため、一旦病原生物が侵入すると一気に増殖できる好都合の環境を提供している。コロニー内の遺伝的多様性の増加、すなわち、系統の異なる病原体への抵抗性を持つ様々なタイプの個体の存在が、コロニー内の病気の伝染を抑制する方向に作用するであろうと予測されてきた。ヤマトシロアリでは異なるコロニーの融合が起きていることが明らかになっているが、コロニー融合によって遺伝的に多様な状態となり、コロニーとして病気に対する抵抗性を増す可能性が考えられる。本研究では、コロニー融合によるコロニーの遺伝的多様性の増加と、病気に対する抵抗性の関係を分析した。異なるコロニーのワーカーを混在させた小規模コロニー融合状態と、それぞれのコロニー単独での病気に対する抵抗性を比較した。その結果、前者の生存率が後者より必ずしも有意に高いとはいえず、むしろ有意に低下する場合もあった。 不妊性のような顕著な利他行動は、血縁関係が低度のときには抑制され高いときに発現されやすいのが適応的な調節であろうと予測される。半倍数性の社会性膜翅目では、性比を巡る女王とワーカーの対立を切り口として血縁選択の検証が行われてきた。一方で、両性2倍体で高度な真社会性をもつシロアリにおいて、血縁選択を実験的に立証した研究は未だ無い。ヤマトシロアリでは群飛後に雄と遭遇できなかった雌が、2個体の雌同士で共同創設し、単為生殖を行う。このような2雌創設コロニーは、異なる2つの母系メンバーから成り、即ち血縁者と非血縁者の混合となる。我々は高い血縁対立の存在下では、繁殖虫生産を巡る競争が起こり、通常よりも早期にニンフや補充生殖虫の生産が開始されることを発見した。シロアリにおいて血縁度依存的な利他行動調節の証拠が示されたのは初めてであり、これはシロアリの社会進化における血縁選択の重要性を強く示唆するものである。
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Research Products
(5 results)