2005 Fiscal Year Annual Research Report
在来・外来種間の遭遇経験の欠如と獲得が生物学的侵入において果たす役割に関する理論
Project/Area Number |
17770022
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
近藤 倫生 龍谷大学, 理工学部, 講師 (30388160)
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Keywords | 食物網 / 生物学的侵入 / 適応的食物網仮説 |
Research Abstract |
外来種と在来種など互いに遭遇経験を持たない種の間に生じる相互作用は遭遇経験をもつ種間の相互作用とは質的に異なる可能性がある。その具体例として捕食行動が挙げられる。捕食者が餌生物を利用する過程は「餌であることの認識」「餌の種類の判別」「捕獲・利用」の三段階に分けられるが、遭遇経験の欠落した種の間ではこれらの過程のいずれか又は複数が「不全」に陥る可能性がある。 特に二段階目の過程が機能しない場合には、捕食者は被食者を他の被食者から区別できなくなるだろう。このとき、本来の相互作用では見られるはずの餌選択のスイッチがうまく働かなくなることが予想される。このような遭遇経験の欠落に起因する捕食行動の不全が食物網の安定性に与える影響を調べることで、外来種の存在が食物網の安定性をどのように変化させるかを理論的に研究した。研究結果は以下のようにまとめられる。 1.この外来種侵入に関する仮説のもととなる「適応的餌選択の存在下では複雑性の増加が食物網を安定化する」とした適応的食物網仮説がどれほどロバストであるかを検証した。数理モデルの解析から現実的な食物網構造や捕食圧のもとでも適応的食物網仮説が成り立っことが確かめられた。 2.現実的なトポロジーを仮定した食物網の数理モデルを利用して、餌選択能力のあるなしが食物網の安定性に対してどのような影響を持つかを調べた。数理モデルの解析の結果、捕食者が被食者をうまく認識できないなどの理由で餌選択能力が低い場合には、食物網が不安定化することがわかった。この効果は食物網が複雑な時ほどより顕著であることも明らかになった。 3.在来種間に発生する適応的餌選択が食物網構造に与える影響を評価することを目的として、新しい食物網構造の指標「柔軟性」を提唱した。数理モデルの解析から、「柔軟性」は食物網安定性をとてもよく説明することがわかった。
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Research Products
(5 results)