2006 Fiscal Year Annual Research Report
在来・外来種間の遭遇経験の欠如と獲得が生物学的侵入において果たす役割に関する理論
Project/Area Number |
17770022
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
近藤 倫生 龍谷大学, 理工学部, 講師 (30388160)
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Keywords | 食物網 / 適応的食物網仮説 / 被食防御 / 複雑性-安定性論争 |
Research Abstract |
外来種と在来種を隔てる本質的な生物学的違いは、遭遇経験に基づく適応の程度にある。在来種と外来種の間では、在来種同士と比較して、共存期間の短さのため、互いに適応的に反応することがより困難になると想像される。これまで、研究代表者は捕食者の適応的捕食に着目し、それが生物群集の構造や個体群動態に及ぼす影響について研究を進めてきたが、本年度は、このアイデアをさらに拡張し、被食者の対捕食者防御というまったく別の適応的行動が、群集構造や個体群動態に及ぼす影響について研究を進め、学術雑誌に成果を発表した。さらに、外来種が新しい生息地に侵入後、爆発的増加をみせ、やがて沈静化する現象(boom-and-bust現象)の生じるメカニズムの解明をめざし、数理モデルを構築し、適応に基づく理論的説明を試みた。 本研究の具体的成果とその公表実績は以下のように要約される: (1)適応的対捕食者防御行動が食物網の安定性につよく影響する可能性を理論的に示した。(学術雑誌にて受理済) (2)捕食者と被食者との間の適応ミスマッチが外来種のboom-and-bust現象を起こす可能性を示唆した。(書籍の1章[分筆]として発表) (3)食物網構造が、捕食者の適応的餌選択行動の結果として理解できることを理論的に示した。(第54回日本生態学会において2題の口頭発表) (4)適応的捕食者が食物網の「複雑性一安定性」関係を正に逆転させるとした前の研究を個体ベースモデルによって再試験し、そのメカニズムの限界を明らかにした。(第54回日本生態学会において1題のポスター発表) これらの研究を通じて、遭遇経験の欠如という外来種の特徴の群集レベルでの影響を理論的に予測・評価することができた。これは適応を考慮に入れた群集生態研究ならではの重要な成果だと考える。
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Research Products
(2 results)