2006 Fiscal Year Annual Research Report
亜高山帯における樹木の成長制限要因としてのシンク制限に対する栄養条件の影響の解明
Project/Area Number |
17770024
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
壁谷 大介 独立行政法人森林総合研究所, 木曽試験地, 研究員 (30353650)
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Keywords | 植物生態学 / 亜高山帯針葉樹林 / 成長制限 / 貯蔵炭水化物 / 生育温度 / 土壌栄養条件 / シンク制限仮説 |
Research Abstract |
本研究では、高海抜域における樹木の成長制限要因のうち、シンク制限と栄養塩制限それぞれの影響を分離し、シンク制限の重要性を評価することを目的としている。昨年度は、2標高(高標高・低標高)×2栄養条件(貧栄養・富栄養)の環境条件下で栽培したシラベ稚樹において、葉の貯蔵炭水化物量が、貧栄養・富栄養のいずれの栄養条件であっても高標高生育の個体で高い傾向があることを示した。そこで本年度は、昨年度得られた結果の解析を更に進めることに加え、1)試験地付近に自生するシラベ個体を対象として、異なる標高に生育するシラベの個体サイズの把握と成長速度の差の解明、2)標高・栄養条件がシラベ稚樹の枝・幹等の炭水化物類等の含有量に与える影響の解明を目的として、御嶽山山麓の異なる標高二箇所に設定した固定サイトの毎木調査、デンドロメータを用いた肥大成長量測定の測定、昨年度に回収したシラベ個体の各器官の貯蔵炭水化物量測定を試みた。 その結果、平均樹高・平均胸高直径のいずれも低標高サイトに生育するシラベ個体の方が小さく、幹直径の相対成長速度も、低標高個体で有意に大きいことが明らかになった。当年葉の窒素濃度は、低標高生育の個体で小さかったが、低標高生育の個体の方が比葉面積が大きく、その結果当年葉・一年葉の単位葉面積あたりの窒素量は、むしろ高標高生育の個体で大きい傾向が示された。その一方で、当年葉に含まれる非構造性炭水化物量は、栽培個体で観察されたような標高間の差は検出されなかった。 栽培シラベ稚樹の貯蔵炭水化物濃度は、葉・枝・幹・根のいずれの器官においても栄養条件によらずに高標高生育の個体で高いことが示された。また貯蔵炭水化物濃度は、栽培条件によらず当年葉で最も高く、幹・根で低い傾向にあった。しかしながら個体重に占める根重の割合が大きいため、個体レベルでみると、根の貯蔵器官としての役割も無視できないことが明らかになった。
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