2005 Fiscal Year Annual Research Report
シアノバクテリアにおける光合成電子伝達鎖のレドックス検知機構の解明
Project/Area Number |
17770029
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
日原 由香子 埼玉大学, 理学部, 助手 (60323375)
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Keywords | シアノバクテリア / 転写制御 / レドックス調節 |
Research Abstract |
シアノバクテリアSynechocystis sp. PCC6803のSsl0564推定転写因子が、シアノバクテリアの相同遺伝子のみに高度に保存された三つのシステイン残基をC末端領域に持つことから、光合成生物特有の転写調節機能を持つのではないかと考え、その機能解析を開始した。DNAマイクロアレイ解析の結果からSsl0564が弱光条件下でいくつかの遺伝子の正あるいは負の調節に関わっていることが示唆された。これら推定標的遺伝子の転写産物をノーザン解析により調べたところ、強光照射によりSsl0564による制御が失われるという結果が得られた。また、強光下で光合成電子伝達阻害剤を添加した条件では、あたかも弱光下であるかのように、Ssl0564による転写制御が行なわれていた。以上の結果から、光合成電子伝達鎖からの還元力が少ない条件下で、Ssl0564が活性型であることが示唆された。ウェスタン解析によりSynechocystis sp. PCC6803の細胞内Ssl0564を検出したところ、光強度変化によらず、常に二量体として一定量存在しており、活性型と不活性型を区別することは出来なかった。そこで、二量体内システイン残基のレドックス変化をより詳細に調べるため、in vivoチオールトラッピングを行った。すると、光合成電子伝達鎖からの還元力供給が少ない弱光下、および強光照射時に光合成電子伝達阻害剤を添加した条件下で、二量体内のシステイン残基が酸化型となっており、そのとき標的遺伝子の転写制御が起きていることが分かった。一方強光下では、Ssl0564は還元されたシステイン残基をもつ不活性型となり、標的遺伝子の転写制御能も失っていた。以上の結果から、Ssl0564転写因子は、光合成電子伝達鎖のレドックス変化を検知しSsl0564二量体内のシステイン残基が酸化されたときに活性型となり標的遺伝子の転写制御を行っている、と考えられた。
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