2005 Fiscal Year Annual Research Report
葉と根の間でのシステミックな傷応答遺伝子発現の解析
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17770031
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
西内 巧 金沢大学, 学際科学実験センター, 助教授 (20334790)
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Keywords | 傷応応答 / ジャスモン酸 / OPDA / 器官間コミュニケーション / マイクロアレイ / オクタデカノイド経路 / 転写因子 |
Research Abstract |
植物は様々な要因によって傷を受けた時、傷口付近の組織で起こる局所的な防御応答とともに、直接傷を受けていない、離れた葉にも情報が伝達されて全身的(システミック)に防御応答が誘導されることが知られている。本研究では、傷によって誘導される根から葉へのシステミックな遺伝子発現応答について、シロイヌナズナを用いた包括的な発現解析を行った。アジレント社のアラビドプシス2・マイクロアレイ(22k)を用いて、根を傷処理した個体の地上部で遺伝子発現応答について解析を行った。3倍以上の発現誘導を受けた遺伝子を傷処理後30分で72遺伝子、傷処理後360分で19遺伝子同定した。 30分で発現が上昇した器官間傷応答遺伝子の転写制御に関わる遺伝子の中でも、AtERF1、AtERF2とAtERF13はERFファミリー(124遺伝子)の中のサブファミリー、VIIIb(3遺伝子)に、WRKY18とWRKY40はWRKYファミリー(72遺伝子)の中のサブファミリーIIa(3遺伝子)という特定のサブファミリーに属していた。さらに、これらの遺伝子は根から葉への器官間傷応答と局所的な傷応答が同じくらいのレベルで発現誘導を示すことから、これらの転写因子が器官間で発現応答を示すことが植物の傷ストレに対する迅速な適応戦略に重要であることが示唆された。 また、傷害応答に関わる植物ホルモンとして、ジャスモン酸(JA)やエチレンなどが知られており、傷を受けた植物では、オクタデカノイド経路によってJA、12-oxo-phytodienoic acid(OPDA)などの生理活性物質が産成されることが知られている。器官間傷応答を示す遺伝子にはオクタデカノイド経路に関わる複数の遺伝子やJA応答性遺伝子、OPDA特異的に発現誘導が起こる遺伝子が含まれていた。さらに、JA及びOPDAに共通の前駆体であるリノレン酸の欠損変異体を用いた解析やJAに対する発現応答についての解析により、器官間のシステミックな傷応答にもJAやOPDAが重要な役割を担っていることが示唆された。
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