Research Abstract |
キネシンおよびキネシン関連蛋白質は微小管上を動く分子モーターの一大ファミリーであり,真核細胞内における様々な小胞やオルガネラの移動を司っている.ヒトゲノムにおいては実に45ものKRP遺伝子が存在し,各蛋白質の機能解析が精力的に進められてきている.その一方で,高等植物においては,高等植物特有のKRPサブファミリーが存在するにもかかわらず,各KRPの機能は未だ多くが不明である.本研究は,高等植物特有のキネシンサブファミリーの一つ,MKRP蛋白質群の細胞内機能の解明を目指すものである.本年度は,シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)において未解析のMKRP3,MKRP4,MKRP5に関して,緑色蛍光タンパク質(GFP)との融合タンパク質の発現ベクターを植物細胞内で一過的に過剰発現させることにより,これら3つのタンパク質の細胞内局在を明らかにすることを試みた.これらのうち,MKRP3に関しては細胞内で顆粒状の構造物が観察され,ミトコンドリア局在の可能性が示された.また,MKRP3のC末端欠失コンストラクト2種を細胞内において強制発現させたところ,ミトコンドリアの凝集および細胞内運動の消失が見られた.この結果は,MKRP3がミトコンドリアの(恐らく,細胞骨格を利用した)細胞内分布および細胞内運動に関与していることを示唆している.この他,MKRP2/MKRP3二重変異体,MKRP4/MKRP5二重変異体等の作出,MKRP3,MKRP4,MKRP5遺伝子破壊株(Salk Institute T-DNA挿入株)のプロトプラスト染色によるミトコンドリア形態分析などを進めた.
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