2006 Fiscal Year Annual Research Report
ジベレリン不活性化経路の多様性と生理機能に関する研究
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17770048
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
山口 信次郎 独立行政法人理化学研究所, 促進制御研究チーム, チームリーダー (10332298)
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Keywords | 植物 / 植物ホルモン / ジベレリン / シロイヌナズナ / 種子発芽 / シトクロムP450酸化酵素 / イネ / 生合成 |
Research Abstract |
本年度は、ジベレリン不活性化反応を触媒する新しい酵素の生化学的、遺伝学的解析を進め、以下の重要な知見を得ることができた。 1.前年度に明らかにしたイネの新奇ジベレリン不活性化酵素であるEUI(CYP714D1)と類似する酵素がシロイヌナズナに二つ存在する。本年度は、これらの酵素(CYP714A1,CYP714A2)の酵素機能を同定するとともに生理的役割の解析を進めた。その結果、CYP714A1とA2はいずれもジベレリンの代謝酵素として機能するが、その酵素活性はEUIとは異なることが明らかとなった。したがって、CYP714ファミリーは植物種間のジベレリン分子種の多様性に関与しているものと推定される。 2.ミシガン大学のグループと共同で、ジベレリンのメチルエステル化を触媒するS-アデノシルメチオニン依存型メチル基転移酵素をシロイヌナズナから同定した。これらの酵素(GAMT1とGAMT2)をシロイヌナズナで過剰発現すると、活性型ジベレリン量の低下を伴って強い矮化が引き起こされることが分かった。したがって、GAMTによるメチルエステル化はジベレリンの不活性化反応として機能するものと考えられる。 3.シロイヌナズナの種子発芽過程で温度依存的に発現するジベレリン不活性化酵素であるAtGA2ox9の機能解析を進め、当該酵素が高温吸水時の発芽抑制に関与している可能性が示唆された。 4.シロイヌナズナ種子の暗発芽抑制時におけるジベレリン不活性化の重要性について、At2ox2遺伝子のT-DNA挿入変異株と当該酵素の不活性化を受けないアナログ(2,2-dimethylGA4)を用いて検証した。 本課題研究において、シロイヌナズナにおけるジベレリンの不活性化経路として、古くから知られている(1)可溶性酵素による2位の水酸化反応に加えて、(2)シトクロムP450酸化酵素であるCYP714による17位の酸化、(3)メチル基転移酵素(GAMT)による7位のカルボキシル基のメチルエステル化、という多様なメカニズムが存在することが明らかになった。
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