Research Abstract |
1.広塩性魚類の塩類細胞は淡水環境ではイオンの吸収,海水環境ではイオンの排出に関与していると考えられているが,従来,淡水型塩類細胞と海水型塩類細胞を機能的に分類することは不可能であった.研究代表者は,広塩性魚ティラピア胚の塩類細胞について,イオン輸送に関与する3種のイオン輸送体を免疫蛍光3重染色によって可視化し,淡水型塩類細胞と海水型塩類細胞を機能形態的に明瞭に区別することに成功した.この成果はJ Exp Biol誌において公表されたが,高い評価を受け,同誌の巻頭記事およびScience誌のEditors' Choice欄においても紹介されることとなった. 2.研究代表者らは塩類細胞の新規in vitro培養系として,yolk ball incubation systemを既に確立しているが,本年度は,yolk ballが淡水・海水の両環境において無傷の胚と同じようにClイオン濃度の調節を能動的に行っていることを確認した.さらに,yolk ballの塩類細胞は,前述の無傷の胚の塩類細胞と同じように,淡水型と海水型に明瞭に区別出来ることを確認した.これらの成果はJ Exp Biol誌において公表された. 3.研究代表者は平成15年から淡水型・海水型それぞれの塩類細胞に特異的なイオン輸送体の遺伝子クローニングに取り組んでおり,海水型特異的な輸送体遺伝子については比較的短期間でfull sequenceを得ることに成功したが,淡水型特異的遺伝子に関しては困難を極めていた.しかし,本年度ついに淡水型の候補遺伝子のfull sequenceを得ることに成功した.現在mRNAレベルの解析を終え,特異抗体の作成にも成功している.今後タンパクレベルの解析を進め,来年度中には成果を投稿する予定である.
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