2005 Fiscal Year Annual Research Report
東アジア亜熱帯島嶼域におけるヤモリ属の分化・分散史の解明
Project/Area Number |
17770070
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
戸田 守 京都大学, 大学院・理学研究科, 助手 (40378534)
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Keywords | 分類学 / 爬虫類 / 琉球列島 / 種分化 |
Research Abstract |
奄美諸島の4つの無人島と台湾に渡航し,ヤモリ類の採集を行った.標本の分析の結果,奄美諸島の2島嶼にはミナミヤモリのみが,残る2島嶼にはタカラヤモリ型未記載種のみが生息し,その地理的配置も不連続であることが明らかになった.2種の生息環境は島をこえて大幅に重複していたことから,競争排除がこのような分布パターンの形成に強く寄与したと考えられた.一方,台湾の調査では台中県の山岳地から通常のミナミヤモリと体色が異なる標本が得られた.これらは2つのアロザイム遺伝子座(PgdhとPep-lp)において特異な遺伝的特徴を示したことから,その分類学的な扱いをめぐって形態的にも検討がなされるべきものである.しかし同時に,台湾西部の丘陵地ではヤモリ属の生息密度が極めて低く,多数の地域標本に基づき集団間の直接的な干渉を調査するのが困難であることも分かった.翻ってこれは,上述の遺伝型がパッチ状に隔離されて生じた可能性を示唆しているともいえる. 琉球-台湾地域のミナミヤモリ種群を対象としたmtDNAの分析の結果,塩基置換率が数パーセントに及ぶ深いレベルのハプロタイプ多型が認められた.しかし,変異の地理的パターンは複雑で,トカラ諸島や先島諸島,台湾の一部の集団が地理的に入り交じるなど,アロザイム分析の結果との齟齬が見られた.このような状況は,本種群がいったんは地理的に分化しながらも,その後,複数次に渡って分散し,部分的に集団の融合を起こしてきた可能性を強く示唆している。次年度のさらなる分析により,その全貌を解明する必要がある. この他,密な採集により台湾東北部の遺伝型と通常のミナミヤモリの北側の分布境界を特定した.そこには,南側の境界と異なり,河川などの地理的障壁は存在していなかった.したがって両遺伝型の維持は,外的あるいは内的な自然選択が介在した雑種不和合性によっていると推察された.
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