2006 Fiscal Year Annual Research Report
東アジア亜熱帯島嶼域におけるヤモリ属の分化・分散史の解明
Project/Area Number |
17770070
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
戸田 守 京都大学, 大学院理学研究科, 助手 (40378534)
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Keywords | 分類学 / 爬虫類 / 琉球列島 / 種分化 |
Research Abstract |
奄美諸島の2つの無人島でヤモリ類の採集調査を行った.標本分析の結果,江仁屋離島の標本は全てタカラヤモリ型未記載種,木山島の標本は全てミナミヤモリと同定された.これに前年度の調査結果と併せると,奄美諸島では,面積が大きな島に2種が,小さな島には一種だけが分布すると言うことができ,さらに,両種の分布パタンに地理的な規則性がないことから,全体として不規則なチェス盤型分布になっている見なすことができる.このような状況から,奄美諸島においては2種間の競争排除がヤモリの分布パタンの形成に大きく寄与してきたと考えられた.mtDNAの変異分析の結果は,島嶼集団間の分化程度がミナミヤモリでより小さいことを示しており,この種が後からの侵入者であることを示唆している.従って,このチェス盤型分布は,タカラヤモリ型未記載種によるミナミヤモリの侵入の制限と,ミナミヤモリによるタカラヤモリ型未記載種の駆逐がその要因だと捉えることができる. 一方,沖縄諸島に分布する2種(ミナミヤモリとオキナワヤモリ[仮称])では,少なくともオキナワヤモリのみが分布する島は知られていないうえ,非常に小さな島でも両者が共存しているケースもあることが分かっている.mtDNAの分析結果から,やはりミナミヤモリが新しい時代の侵入者であることが示唆されたが,この地域ではオキナワヤモリの存在はミナミヤモリの侵入の妨げにはならなかったと推測される.2種が共存する小島嶼ではオキナワヤモリの体サイズが大型化していることから,沖縄諸島で接触した2種はなんらかの資源分割によって共存を果たしていると予想される. この他,台湾東北部の遺伝型と通常のミナミヤモリの関係について遺伝分析を進めたところ,両者の間には非常に狭い交雑帯が存在することが示唆された.この結果から,両者は雑種崩壊が起きている狭い地域を介して,その境界が保たれていると考えられた.
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