2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17770078
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
富谷 朗子 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球内部変動研究センター, 研究員 (60392940)
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Keywords | 進化 / シアノバクテリア / 光合成生物 / 形態 / 多様性 / 環境応答 |
Research Abstract |
シアノバクテリアは、約27億年前までに地球上に出現し、初期に形態的な多様性を獲得した後、現在まで大きな形態的な変化をせずに生き延びているという、いわゆる「生きた化石」として知られている。しかし、その進化の詳細はよくわかっていない。そこで、シアノバクテリアの形態的多様性を支える分子機構を解明するため、糸状性シアノバクテリアの細胞分化に着目し、特に研究の遅れているホルモゴニア形成の分子機構を調べた。 これまで研究代表者は、糸状性シアノバクテリアのモデル生物Nostoc punctiformeのトランスポゾン変異体を作出・選別し、ホルモゴニア形成能を失った個体を複数ライン単離、各個体でトランスポゾンにより破壊されていた遺伝子の塩基配列を決定していた。H18年度には、前年度までに未解析だった個体について変異体を再構築し、ホルモゴニア形成能・窒素固定能・宿主のコケ植物との共生能それぞれを調査した。その結果、ある遺伝子を破壊すると、ホルモゴニア形成および植物への共生の能力が野生型に比べて著しく低下することが判明した。この遺伝子は、情報伝達に関与するタンパク質をコードしており、その特徴的なドメイン構造は、細胞分化能を示す糸状性シアノバクテリアにのみ存在することが、ゲノム情報の検索から示唆された。 これまで、ホルモゴニア形成に関与する遺伝子としては、ホルモゴニアの分化を抑制する機能を持つと推測される遺伝子群hrmUAが同定されているが、ホルモゴニア分化・植物宿主への共生を正に制御する遺伝子は知られておらず、本研究で同定された遺伝子は、宿主植物への応答やホルモゴニア形成に関与する遺伝子として、またシアノバクテリアの形態進化を探る鍵の一つとして、今後の発展的研究が期待される。
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