Research Abstract |
本研究では,黄色ブドウ球菌由来の4種類の莢膜合成蛋白質,すなわち,CapE, CapF, CapG, CapLの結晶構造解析を目指したが,その中で,CapFの立体構造をSe-MAD法で2.6Åの分解能で決定することに成功した.明らかになった構造は,結晶学的に関連付けられた2量体構造であった.これはゲルろ過の結果とよく一致するものであるとともに,他の結晶系でも同様の2量体を形成していたことから,溶液中での本蛋白質の立体構造を反映するものと考えられる.単量体のCapFの構造は2つのドメイン(Nドメイン,Cドメイン)から構成されており,各ドメインの構造と類似した構造の蛋白質を検索したところ,NドメインはRm1D, CドメインはRm1Cという,いずれも莢膜を合成する蛋白質と類似していることが明らかになった.Rm1C, Rm1Dは一連の莢膜合成反応の中で,連続する2つの反応を触媒する酵素である.活性点について,CapFとRm1C, Rm1Dとを比較したところ,CapFにおいてもRm1C,Dと同様な基質結合ポケットが存在することが明らかになった.しかしながら,Rm1C, Rm1Dの触媒残基は保存されていなかったことから,同様な活性部位は有するが,そのメカニズムは異なると考えられる.さらに,His残基が3つ集中するHisクラスターが存在することが明らかになり,これらの残基の中心には金属イオンと思われる電子密度マップが確認された.蛋白質調製中には金属イオンは添加していないため,培地中の金属イオンを取り込んだものと推察される.今後,活性評価を行うことにより,これらの構造学的特徴が機能に及ぼす影響について考察する予定である.
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