2005 Fiscal Year Annual Research Report
抗マラリア薬の開発を志向したマラリア原虫由来加水分解酵素の基質認識機構の解明
Project/Area Number |
17770094
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
田中 信忠 昭和大学, 薬学部, 講師 (00286866)
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Keywords | マラリア / ドラッグデザイン / 化学療法 / 結晶 / X線 / 立体構造 / 構造生物学 / 阻害剤 |
Research Abstract |
S-アデノシル-L-ホモシステインヒドロラーゼ(SAHH)は,生体内メチル化反応の副産物として生じるS-アデノシル-L-ホモシステイン(SAH)をホモシステイン(Hcy)とアデノシン(Ado)に加水分解する酵素である.SAHHの阻害剤の一種であるネプラノシンAが,マラリア原虫の増殖を阻害するという報告がなされて以来,マラリアに対する化学療法剤の標的として,マラリア原虫由来SAHHが脚光を浴びてきた.しかし,SAHHは宿主でも重要な生理機能を担っているため,本酵素を標的とする抗マラリア薬には高い選択阻害能が要求される.我々は,種選択的阻害剤を開発するため,熱帯熱マラリア原虫Plasmodium falciparum由来SAHH(PfSAHH)のX線結晶構造解析を開始し,組換え型PfSAHHと反応生成物であるAdoとの複合体の立体構造解析に成功した.その結果,ヒトSAHHとPfSAHHのAdo結合部位の構造比較により,ヌクレオシド型阻害剤の種選択性向上の手掛かりを得た.しかし,Ado結合サイトを競合する既存のヌクレオシド型阻害剤はHcy結合サイトに空間が残されているため,結合強度に問題がある.従って,PfSAHHに対し強力かつ種選択的新規抗マラリア薬を開発するためには,Hcy結合サイトを同定し,より嵩高い阻害剤をデザインすることが必須である.そこで我々は,不活性型置換体(PfSAHH(inac))とSAHとの複合体の結晶構造の解明によりHcy結合部位を同定し,嵩高い阻害剤のデザインを目指すこととした. 野生型PfSAHHの場合と同様に,金属アフィニティークロマトグラフィー,ゲルろ過クロマトグラフィーの2段階でPfSAHH(inac)を精製し,基質SAHあるいは反応生成物Ado存在下でPfSAHH(inac)の結晶を得ることに成功した.
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