2006 Fiscal Year Annual Research Report
蛋白質1分子の細胞内三次元可視化技術による細胞癌化機構の解明
Project/Area Number |
17770123
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
渡邉 朋信 東北大学, 先進医工学研究機構, 助手 (00375205)
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Keywords | HER2 / 小胞輸送 / ナノメトリ / 三次元観測 / 単粒子追跡 / 量子ドット |
Research Abstract |
今年度、乳がんに関わる膜蛋白質HER2のエンドサイトーシス、細胞内輸送のメカニズムを解明するため、細胞内において、HER2の挙動を三次元的かつナノメートルスケールで観察するための顕微鏡法を開発してきた。 三次元リアルタイム共焦点顕微鏡では、厚い試料の観察が可能であるが、対物レンズを操作する必要があるため、空間・時間分解能に限界がある。そのため、nm,msオーダーの蛋白質の挙動を観察することはできない。そこで、我々は、二焦点画像を用いた三次元単粒子追跡法を開発した。上記光学系では、異なる二つの焦点面における画像を、一つのカメラで取得することができる。我々は、それぞれの焦点面における二つの蛍光像から、蛍光粒子の三次元位置を計算するアルゴリズムを考案し、蛍光粒子の三次元位置をxy方向に2nm、z(光軸)方向に6nmの精度で2msの時間分解能で追跡することに成功した。上記光学系を用いて、核に向かって輸送されるHER2を含む小胞を観察してみると、小胞は、進行方向に8nmのステップを繰り返しており、in vitroで観察されたダイニンのステップの大きさと一致した。また、その三次元軌跡から、小胞は円柱状を運動していることが分かった。ダイニンは、前方の8nmステップと同期した、水平方向のステップは観察されず、微小管上のプロトフィラメントを乗り換えることなく、HER2を輸送していることが明らかとなった。 本手法は、細胞内における様々な蛋白質の挙動を3次元的に観測できる。今後は、癌原因膜蛋白質であるHER2の挙動を、抗癌剤Herceptinの投与と絡めて観察することにより、HER2による細胞癌化と、また、Herceptinの効果の様を観察していく予定である。
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