2005 Fiscal Year Annual Research Report
線虫の感覚神経回路網における情報処理と行動制御に関する研究
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17770138
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
若林 篤光 岩手大学, 工学部, 助手 (30332498)
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Keywords | 線虫 / 移動運動 / 神経回路 / 突然変異 / トランスポゾン / セロトニン |
Research Abstract |
本年度の目標及び計画にしたがい、ゲノムワイドスクリーニングによって、線虫の移動運動の量的な形質に異常を持つ変異体を複数系統単離した。突然変異の誘発には、ショウジョウバエに由来するMos1転移因子(トランスポゾン)を利用した。得られた変異系統に対して、トランスポゾン特異的なプライマーセットを用いて挿入変異の有無を検討したところ、いずれの系統からも挿入変異は検出されなかった。変異体の表現型は、トランスポゾンが一旦挿入された後に、不正確に切り出されること(imprecise excision)によって生じたものと推測される。そこで本年度は、突然変異誘発条件の最適化を中心に実験系の再検討を行い、充分な数の挿入変異が得られると期待される実験条件を決定した。次年度はこの条件を用いて新たな変異体の単離を行う。 また、移動運動の量的な性質を決定するメカニズムを知る目的で、神経伝達物質(修飾物質)のひとつ、セロトニンの関与について検討した。セロトニンの合成に異常を持つ変異体では、充分にエサを与えた線虫をエサのない培地に移動させてから50分後以降に観察される前進運動の持続時間の伸長が顕著に低下していた。この異常は培地にセロトニンを加えることで回復した。また線虫の持つ3種のセロトニン作動性神経を個別にレーザー除去したところ、やはり前進運動の持続時間に影響が見られた。以上のことから、前進運動の調節におけるセロトニンの関与が示唆された。この結果はBiosci. Biotechnol. Biochem誌に発表した。 さらに、新貝鉚蔵教授との共同研究で線虫の走化性行動に関する解析を行い、その結果をComparative Biochemistry and Physiology誌に発表した。
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