2005 Fiscal Year Annual Research Report
菌食アリにおけるカースト分化機構および菌食メカニズムの解明
Project/Area Number |
17770203
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
村上 貴弘 北海道大学, 創成科学共同研究機構, 学術研究員 (40374706)
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Keywords | 発生生態 / サブカースト進化 / 菌食 / 寄生、共生 / arms race / 共進化 / FISH / 染色体 |
Research Abstract |
本年度は、アリ類におけるカースト分化の発生進化過程を、SEM顕微鏡を用いた詳細な観察および切片作成など発生レベルから解析した。その結果、これまでワーカーの発生では翅の形成はまったく起こらないものと思われていたが、実際には一度翅の原基が形成されてから、アポトーシスなどを起こして退縮していくことが明らかになった。繁殖に関連した器官(卵巣小管)でも同様に不妊であるはずのワーカーカーストで一時的に繁殖メスとほぼ変わらない卵巣小管を形成することが明らかになった。これらのデータは、アリ類におけるサブカースト進化を考える上で重要な発見であるだけではなく、アリ類一般における不妊のワーカーの進化という大きな命題に対しても新しい知見である。また、複眼の大きさやその中の個眼の数はサブカーストごとに異なることも明らかになった。 菌食行動の起源について詳細な行動観察を行った結果、アリの口腔内にある特殊なポケットに抗生物質を産出するバクテリアが存在していること、そしてそれらは寄生菌が繁殖する場合にとくに多く吐き戻されていることを発見した。また、これまでに報告例のない独特のグルーミング行動も発見した。これは、いまだにその存在意義が不明な中胸分泌腺の部分をグルーミングしていることから、何らかの化学物質を寄生菌の繁殖抑制に用いていることが示唆された。 本年度は更に、外部形態形成に重要な遺伝子の単離、そしてその染色体上での位置情報を明らかにすることを目的に実験動物(脊椎動物、無脊椎動物)を用いてFISH mappingの系の確立を試みた。結果として、世界に先駆けてSingle copyのfunctional genesのFISH mappingに成功した。
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