2006 Fiscal Year Annual Research Report
陸上移動運動におけるヒトの機能的潜在性:free-ride現象に着目して
Project/Area Number |
17770217
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Research Institution | University of East Asia |
Principal Investigator |
安陪 大治郎 東亜大学, 総合人間・文化学部, 講師 (10368821)
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Keywords | 歩行 / ウォーキング / ランニング / 重量物 / free-ride / 経済速度 / 弾性エネルギー |
Research Abstract |
本年度は昨年の研究実績を踏まえて、1)free-rideと路面傾斜角度の関係、2)重量負荷によるOptimal Speed(経済速度)の変化、3)ランニングでfree-rideが観察されるか否か、の3点についての検討を行った。 検討事項1)と2)について、体重の15%に相当する重量物を背中上部に固定し、「平地歩行」、「5%登り歩行」、「5%下り歩行」の3条件を設定した。対象者は定期的な運動習慣を持つ男子大学生10名であった。歩行速度(ν)は30m/minから120m/minまで10m毎に設定した。各速度における歩行時間は4分間とし、酸素摂取量に定常が見込める後半2分間の平均酸素摂取量(VO_2;ml/kg/min)を歩行速度(ν;m/min)で除すことによって、距離あたりのエネルギーコスト(C;ml/kg/meter)を算出することができる(C=VO_2/ν)。また、歩行速度とエネルギーコストの間には二次曲線状の関係があるので、ν-Cの関係を二次曲線で近似し、さらに近似式を一次微分することによって、エネルギーコストが極少値をとる歩行速度、すなわち経済速度を算出した。その結果、「平地」と「登り」における経済速度は、重量負荷を掛けたときに約4%低下することが明らかにされた。しかしながら、「下り」では経済速度は有意に変化しなかった。言い換えると、体重の15%に相当する重量負荷を背負ったにも関わらず、全ての条件において経済速度の低下はわずかであったことになる。「身体重心周りの回転トルク」がエネルギー代謝に対して有効に作用していると考えられる。 検討事項3)では、定期的な運動習慣を持つ男子大学生7名を対象とし、最大運動負荷試験において得られた最大酸素摂取量(56.8±4.5ml/kg/min)から、後日行われた最大下運動における走速度を決定した。最大下運動では、相対的に持久力の高かった被験者4名と低かった被験者3名を、それぞれ13.2km/hと12.0km/hにて90分間走行させた。走行途中、8〜10分および88〜90分における酸素摂取量、主働筋である外側広筋からの筋電図をサンプルした。この実験では、ランニング時の主働筋である外側広筋から得られた筋電図信号を筋伸張期と筋短縮期に分類し、それぞれの積分筋放電量の比(Ecc/Con比)を筋弾性の指標とした。また、この実験では重量物を付加していないが、90分間のランニングで繰り返し下肢に与える「衝撃」が重量負荷を代用し、「Ecc/Con比の時間変化」が筋機能の長期的な機能変化をシミュレーションしていると考えると分かりやすい。Ecc/Con比は、時間経過と共に低下することが明らかにされ、しかもEcc/Con比の低下と比例するようにエネルギー代謝量が増大する傾向が示された。従来、ヒトの筋弾性作用は変化しにくいと考えられてきたが、本実験で示されたように、疲労などの外的要因によって機能変化することが示唆された。
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Research Products
(2 results)