Research Abstract |
アフリカイネ由来の遺伝的作用を特定する上で有効な材料であるアフリカイネ染色体部分置換系統群(GILs,Glaberrima Introgression Linesの略)をもとに,アジアイネの生産性を向上させるアフリカイネ由来のQTL(量的形質遺伝子座)の検出をいくつかの形質についてGILとアジアイネ親との交配に由来するB_1F_3世代の分離集団を用いて行い,以下のような結果を得た. 1.多分げつ能:GILNo.34由来の分離集団を2集団,水田に疎植栽培し,最高分げつ期と登熟期の分げつ数,ならびに到穂日数に関する遺伝解析を行ったところ,染色体4に有意なQTLを検出した. 2.高蒸散能:GILNo.34由来の分離集団を1集団,ポット栽培し.個葉蒸散速度(スーパーポロメータ使用:既存設備),個体蒸散速度(重量法),葉内ケイ酸含量に関する遺伝解析を行ったところ,染色体2に個体蒸散速度に有意なQTLを検出した. 3.根系発達(根への高分配):GILNo.148由来分離集団を2集団,ポット栽培し,器官別乾物重,T/R比,総根長(ライン交差法),草丈,分げつ数に関する遺伝解析を行ったところ,染色体4に草丈と分げつ数に極めて有意なQTLを検出し,これらは,根系発達に直接関連しないが,植物体のプロポーション形成に関与するQTLであると考えられた. 以上のように,各形質に有意なQTLを検出したことにより,今後イネの生産能力向上に関する優良遺伝子の単離につながる結果であると判断された.また,分離集団の各個体の遺伝子型から,NIL(近似同質系統)に近いものが出来ていることを確認した.これにより,来年度にこれらのNIL系統を基にした,各QTLの作用の検証を行う準備が整ったといえる.
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