Research Abstract |
昨年度に引き続き,管理が10年以上放棄されたコナラ二次林と,林床管理が再開されたコナラ二次林における埋土種子組成の違いを,微地形の違いを考慮して比較した。その結果,埋土種子から発芽した個体の種数および個体数ともに,同じ微地形単位で比較すると,林床管理を再開した林分で有意に高くなる傾向が確認できた。これは,現存植生との類似度についても同様で,林床管理を再開した場所では,その類似度が高くなった。ただし,現存植生に確認できた種のうち,これまでの研究成果で各微地形単位の林床管理が行われた林分に典型的な種の多くは,いずれの埋土種子にも存在していないことがわかった。つまり,林床管理が行われた林分で林床管理が行われることで成立する微地形単位に応じた多様な林床植生は,埋土種子由来の種は必ずしも多くないということが示唆された。また,林床管理が再開された林分の埋土種子組成が多様になり,発芽個体数も増加したのは,管理再開後に成立した林床植生から,新たに追加された種子によるものが大きいと考えられ,長期的な埋土種子を形成する種は,必ずしもそれぞれの微地形単位に対応した種ではないことが示唆された。 こうした結果は,水田の埋土種子組成でも同様の傾向が見られ,水田耕作が放棄されて20年以上経過した場所では,著しく種数が減少し,希少な水田植物も発芽が確認されなかった。以上のように,水田と二次林の埋土種子は,長期間放棄された状況では,管理再開後に多様な植生を復元させるのに寄与する程度は低いことが示唆された。これまでの研究成果において,管理が再開した後すみやかに,立地条件に応じた多様な植生が復元することを説明するためには,埋土種子のみならず,わずかながら残存していた個体群が近傍に存在し,そこからの種の拡大が不可欠であることを意味している。
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