2005 Fiscal Year Annual Research Report
染色体工学的手法を用いた機能性に優れた新規ネギ系統の開発
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17780026
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
執行 正義 山口大学, 農学部, 助教授 (40314827)
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Keywords | ネギ属野菜 / Cysteine Sulfoxide / ネギ / シャロット / 単一異種染色体添加系統 / アリナーゼ / 催涙因子合成酵素 / 含硫黄化合物 |
Research Abstract |
本年度は以下の二つの事項について実験を行った。 1.辛味因子および催涙因子の前駆物質の定性・定量分析 辛味(チオスルフィネート)および催涙因子(チオプロパナール-S-オキシド)はそれぞれ共通の前駆物質であるR-cysteine sulfoxide(CSO)から合成される。この前駆物質の官能基(R)は様々に変化して種類の異なるネギ属野菜にそれぞれ独特の風味(臭み)を与えている。例えば、Methyl-L-CSO(MeCSO)はニラやラッキョウ臭の、1-Propenyl-L-CSO(PeCSO)はタマネギ臭の、2-Propenyle-L-CSO(AlCSO)はニンニク臭のそれぞれ原因物質となる。そこで、本年度はこれらの物質の抽出方法とHPLCによる定性・定量方法をまず確立した。次に、夏期(2005年8月)と冬期(同年11月)に各植物材料の葉身部ならびに葉鞘部からそれぞれCSOの粗抽出を行なった。さらに、対照植物のネギにおいて抽出物をHPLC分析に供試したところ、以下のことがわかった。1)AlCSOはほとんど生産されていない。2)葉身部ではPeCSO含有率が高い、葉鞘部ではMeCSO含有率の方が高い。3)全CSO含量は夏期の葉鞘部でもっとも高くなる。シャロット(分球性タマネギ)由来単一異種染色体をそれぞれ添加したネギ系統シリーズ(添加系統シリーズ)では、MeCSOとPeCSOの比率がネギと著しく異なるものは見あたらなかった、また、ある特定の添加型における夏期の全CSO含量はネギより明らかに高くなっていた。 2.関連酵素遺伝子が座乗する染色体の決定 まず、タマネギの含硫黄化合物代謝経路で働くアリイナーゼおよび催涙因子合成酵素に関する既知塩基配列情報をもとにプライマーセットをそれぞれ設計した。次に、それを用いてシャロットのゲノミックDNAを鋳型としてPCRを行ない、その産物を電気泳動したところ、ともに明瞭な単一バンドが得られた。また、ネギでも同一プライマーセットを用いてPCRを行なったが、バンドは得られなかった。そこで、添加系統シリーズを用いて同様な解析を行なったところ、ある特定の添加型でのみバンドが得られ、この二つの酵素遺伝子の座乗染色体を決定することができた。
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