2005 Fiscal Year Annual Research Report
昆虫病原性線虫およびその共生細菌の分子系統解析と共生メカニズムの解明
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17780042
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
吉賀 豊司 佐賀大学, 農学部, 助手 (00312231)
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Keywords | 昆虫病原性線虫 / 共生細菌 / Steinernema / Heterorhabditis / Xenorhabdus / Photorhabdus |
Research Abstract |
Steinernema属およびHeterorhabditis属の昆虫病原性線虫は,それぞれXenorhabdus属およびPhotorhabdus属細菌と共生関係を持ち,土壌中に生息する害虫の重要な防除手段の一つである.本研究では,このような昆虫病原性線虫を生物農薬としてさらに有効活用していくための基礎的知見を蓄積することを目的とし,日本産12種の昆虫病原性線虫のリボソームDNAのITS領域およびミトコンドリアのCOI領域,また共生細菌の16SリボソームDNA領域の塩基配列を決定し,分子系統樹を構築した.rDNAのITS領域に基づく分子系統解析によって,日本産のSteinernema属線虫は,大きく3つのクレードに分けることができた.ITSでは同種個体群間で大きな違いは見られなかったが,ミトコンドリアのCOI領域で種内変異が検出できた.一方,Steinernema属線虫の共生細菌であるXenorhabdus属細菌は同種の線虫から単離された細菌は分離株間でほとんど変異がなく,4つのクレードを形成した.線虫と細菌の系統樹を比較すると,多くの場合線虫と細菌は対応していたが,分子系統関係の大きく異なる線虫種が同一種の細菌を保持することを示す結果が得られた. 日本産の2種のHeterorhabditis属線虫はCOI領域を用いた解析でも種ごとにクレードを形成したが,H. indicaの6分離株から単離された、Photorhabdus属共生細菌のうち2分離株から得られた細菌は,機知種とは分子系統関係や生理的特徴で大きく異なった.その細菌を保持する線虫のCOI領域はこれまで報告のあるH. indicaとCOI塩基配列で大きな違いが見られなかった.以上のことから,線虫と共生細菌の分子系統関係は対応しており,線虫と細菌は共種分化してきたと考えられるが,系統関係の対応していない一部では線虫と細菌の置換が起こった可能性が示唆された.
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