2005 Fiscal Year Annual Research Report
ワタアブラムシの殺虫剤抵抗性遺伝子が適応度形質に及ぼす影響の解明
Project/Area Number |
17780044
|
Research Institution | 独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構 |
Principal Investigator |
土田 聡 独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構, 果樹研究所ブドウ・カキ研究部, 主任研究官 (50355450)
|
Keywords | ワタアブラムシ / 殺虫剤抵抗性 / 合成ピレスロイド剤 / ナトリウムチャンネル / 作用点抵抗性 / kdr / 適応度 |
Research Abstract |
ワタアブラムシでは合成ピレスロイド剤の標的部位であるナトリウムチャンネルの構造遺伝子上に突然変異が存在することが明らかとなっているが、その遺伝様式は明らかになっていない。また、突然変異を含む対立遺伝子(kdr遺伝子)はヘテロ接合体でのみ検出されている。そこで抵抗性遺伝子の遺伝様式ならびに適応度形質との関係を明らかにするため、交雑試験を行い、遺伝子型の分離比を調査した。 合成ピレンスロイド剤に対し高度に抵抗性を発達させている完全生活環型4クローンおよび感受性1クローンを室内飼育系統より選定し、正逆交雑を行った。産下卵は4℃で40日間低温処理し、孵化幼虫はソラマメ芽出しで個体飼育した。孵化に失敗した個体、発達段階で死亡した個体、および羽化成虫からDNAを抽出し、突然変異部位を含むナトリウムチャンネル遺伝子の一部領域を特異的プライマーを用いてPCR増幅した。得られた増幅産物は制限酵素SspIまたはBsrIを用いて消化し、遺伝子型を判定した。 その結果、抵抗性ヘテロ接合型同士の交雑では、羽化した幹母の遺伝子型は大半がヘテロ接合型(RS)になるケースと、RS型と抵抗性ホモ(RR)との分離比が2:1になるケースとがあった。しかし、いずれの場合においても感受性ホモ(SS)は全く羽化しなかった。一方、RS型とSS型との交雑ではSS型は出現した。RS型同士の交雑において、孵化に失敗した個体の遺伝子型を調べたところ、SSの割合が高く、SSの個体は全て孵化・発育の段階で死滅していることが明らかとなった。これらのことから、少なくとも室内においてはRR型の個体は羽化に至ること、また、SS型には著しく適応度が低くなるケースが存在することが明らかとなった。
|