2006 Fiscal Year Annual Research Report
ワタアブラムシの殺虫剤抵抗性遺伝子が適応度形質に及ぼす影響の解明
Project/Area Number |
17780044
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
土田 聡 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 果樹研究所果樹害虫研究チーム, 主任研究員 (50355450)
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Keywords | ワタアブラムシ / 殺虫剤抵抗性 / 合成ピレスロイド剤 / ナトリウムチャンネル / 作用点抵抗性 / kdr / 適応度 |
Research Abstract |
ワタアブラムシでは合成ピレスロイド剤の標的部位であるナトリウムチャンネルの構造遺伝子上に突然変異が存在することが明らかとなっているが、その遺伝様式は明らかになっていない。また、室内飼育系統、野外個体群のいずれにおいても突然変異を含む対立遺伝子(kdr遺伝子)はヘテロ接合体でのみ検出されており、ホモ接合体クローンは見つかっていない。そこで抵抗性遺伝子の遺伝様式ならびに適応度形質との関係を明らかにするため、昨年度に引き続き交雑試験を行い、遺伝子型の分離比を調査するとともに低温、高温に対する耐性を遺伝子型間で比較した。 その結果、前年同様、ヘテロ接合型(SR)同士の交雑からは抵抗性ホモ(RR)およびRSの羽化個体は得られたが、感受性ホモ(SS)個体は全く羽化しなかった。産卵後の卵、孵化に失敗した幼虫、および発育段階で死亡した幼虫を回収し、遺伝子型を調査した結果、SSの卵は高頻度で得られたが、いずれも孵化時あるいは発育段階で死滅しており、他の遺伝子型に比べ適応度が劣ることが示唆された。 羽化した幹母から確立したRR、RS、SSの各系統を用い、遺伝子型と適応度との関係を調査した。標準的な条件(20℃、16L8D)および高温条件(30℃、16L8D)で飼育したとき、RSクローンの羽化率が最も高く、癌で最も低くなる傾向が見られたが、いずれも統計的には有意ではなかった。また、低温・短日条件(4℃、8L16D)下における30日後、40日後の生存率および産仔数を各遺伝子型間で比較した結果、生存率には遺伝子型間で差が認められなかったが、SSクローンの産仔数が他に比べて多くなる傾向が認められた。 これらの結果から、RRクローンが高温、低温耐性において著しく劣るということは考えられなかった。したがって、餌条件の悪化、あるいは警報フェロモンに対する反応性の違いなど、他のアブラムシ類で報告のあるような適応度に関わる形質を遺伝子型間で比較する必要があると考えられた。
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