2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17780077
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤原 誠 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助手 (90332345)
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Keywords | 色素体 / 二分裂 / オルガネラ |
Research Abstract |
葉緑体は対称二分裂によって複製される。その過程は、葉緑体中央赤道面におけるFtsZリングの形成(分裂位置の決定)とそれに続く不可逆的な膜狭窄反応から成り立っている。 シロイヌナズナの核ゲノムには原核生物の細胞分裂位置制御因子MinEの相同因子(AtMinE1)がコードされており、同じくMinD相同因子(AtMinD1/ARD11)とともに葉緑体の分裂位置決定に関わることが示されている。 今年度、AtMinE1遺伝子の第1イントロンにアグロバクテリウム由来のT-DNAを持つシロイヌナズナ変異体(atminE1)では、葉緑体分裂が著しく阻害され、葉肉細胞中に一個から数個の巨大葉緑体が生成されることが判った。またAtMinE1過剰発現系統では、葉緑体サイズの顕著な差異に加えて、全体的な葉緑体数の減少が認められた。葉緑体分裂位置に関する統計的解析を行ったところ、二分裂中の葉緑体の約半数は中央赤道面に分裂狭窄を持っていた。また、AtMinE1過剰発現系統とAtMinD1劣勢突然変異体(arc11)の葉緑体表現型は、ほぼ同等であった。さらに葉緑体発達過程におけるFtsZリングの形成状況を追ったところ、AtMinE1過剰発現系統およびarc11変異体いずれにおいても、葉緑体分化による膜の膨張によりFtsZリング位置からの分裂狭窄の進行が阻害されることが示唆された。 以上、昨年度および本年度の結果により、葉緑体の分裂位置決定にはAtMinE1とAtMinD1の拮抗的な活性のバランスが必要であり、その標的は葉緑体中央以外でのFtsZリングの形成阻害であることが示された。また、AtMinE1の活性が優勢となる状況下では、葉緑体の対称または非対称二分裂、あるいは被同調的な多分裂が起こること、さらには葉緑体の膜膨張を介した分裂阻害効果により、葉緑体サイズの極端な差異に至ることが示された。
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