2005 Fiscal Year Annual Research Report
複合細胞培養系を用いた炎症性腸疾患モデル系の構築及び食品因子によるその制御
Project/Area Number |
17780100
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
薩 秀夫 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助手 (80323484)
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Keywords | 複合培養系 / 腸管上皮細胞 / マクロファージ / 炎症性腸疾患 / TNF-alpha |
Research Abstract |
小腸上皮細胞層下に存在する免疫系細胞は液性因子を介して小腸上皮細胞と相互作用をする。本研究では、小腸上皮細胞とマクロファージ様細胞の相互作用を解析するために、複合培養系を用いたin vitroモデルシステムを構築した。ヒト小腸上皮モデルCaco-2細胞は、透過性膜上に培養し小腸上皮様に分化させた。一方ヒト単球由来THP-1細胞は、マクロファージ様に分化させた後Caco-2細胞との複合培養に供した。48時間複合培養したところ、Caco-2細胞の細胞間透過性の指標である経上皮電気抵抗値(TER値)が有意に低下し、また細胞膜損傷の指標であるLDH放出率の増加がみられた。これより、THP-1細胞との複合培養によりCaco-2が細胞障害を受けることが示唆された。THP-1細胞の培養上清を用いてもCaco-2に対する細胞傷害は見出された。またTHP-1細胞の培養上清を加熱処理したところ細胞障害活性は消失したことから、細胞障害は熱に不安定な因子によることが示唆された。そこでTHP-1が分泌する炎症性サイトカインに注目しELISA法にて測定したところ、TNF-alpha、IL-1beta、IL-6などの分泌が確認された。複合培養系にこれらの中和抗体を加えて検討したところ、抗TNF-alpha抗体を添加することによってTHP-1によるCaco-2細胞障害は顕著に抑制された。これより、THP-1から分泌されたTNF-alphaがCaco-2細胞に傷害を誘導していることが示された。さらに炎症性腸疾患の主要な治療薬である5-アミノサリチル酸を本複合培養系に添加したところ、Caco-2の細胞障害は有意に抑制された。これより本複合培養系は、炎症性腸疾患の状態を一部再現したin vitroモデル系となることが強く示唆された。現在本複合培養系を用いて、Caco-2細胞障害を抑制する食品因子を探索中である。
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Research Products
(6 results)