2006 Fiscal Year Annual Research Report
複合細胞培養系を用いた炎症性腸疾患モデル系の構築及び食品因子によるその制御
Project/Area Number |
17780100
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
薩 秀夫 東京大学, 大学院農学生命科学研究科, 助手 (80323484)
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Keywords | 複合培養系 / 炎症性腸疾患 / 腸管上皮細胞 / マクロファージ / アポトーシス / タウリン |
Research Abstract |
昨年度腸管上皮様Caco-2細胞とマクロファージ様THP-1細胞を用いて複合培養系を構築し、THP-1細胞が分泌するTNF-alphaによってCaco-2細胞層が傷害を受けることを見出した。この細胞傷害は抗TNF-alpha抗体及び炎症性腸疾患の治療薬である5-アミノサリチル酸によって有意に抑制され、本複合培養系が炎症性腸疾患の状態を一部再現したin vitroモデル系となりうることを示した。そこで引き続きTHP-1細胞によるCaco-2細胞傷害の特性を解析した結果、傷害を受けたCaco-2ではカスパーゼ3活性が亢進していること、カスパーゼ3の阻害剤を添加することによってTHP-7によるCaco-2細胞傷害が抑制されることが示された。また形態学的解析よりネクローシス像とアポトーシス像の両方が観察され、THP-1によるCaco-2細胞傷害にはアポトーシスとネクローシスの両方が関与していることが示唆された。またTHP-1によるCaco-2細胞傷害はI型TNF-alpha受容体の中和抗体及びNFκBカスケードの阻害剤であるPDTCによって有意に抑制され、本細胞傷害にI型TNF-alpha受容体及びNFκBが関与していることが示唆された。並行して炎症性腸疾患を予防・改善する食品因子の探索を目的として、本複合培養系を用いてCaco-2細胞傷害を抑制する食品因子の探索をおこなった。その結果アミノ酸の一種であるタウリンを添加することによってTHP-1によるCaco-2細胞傷害が顕著に抑制されることが見出された。そこでDSS誘導腸炎モデルマウスを用いてタウリンの作用をin vivoで検証したところ、タウリン投与によって腸炎に伴った体重の減少が遅延するとともに下痢や血便などに改善効果がみられた。以上より、タウリンはin vivoにおいて腸炎症を予防する作用を有することが示唆された。
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