2006 Fiscal Year Annual Research Report
製紙用パルプの酸素脱リグニン過程における炭水化物の分解抑制技術の開発
Project/Area Number |
17780136
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
横山 朝哉 東京大学, 大学院農学生命科学研究科, 助手 (10359573)
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Keywords | 酸素 / 脱リグニン / 活性酸素種 / パルプ / 炭水化物 |
Research Abstract |
本研究本年度においては、酸素漂白条件下で様々なフェノール性化合物(Phe)を処理し、これらの分解を詳しく解析した。酸素-アルカリ処理において、Pheは分子状酸素と反応し分解されるが、この過程で活性酸素種を生成する。この活性酸素種の中には、Pheを分解できるものがある。したがって、Pheの分解を詳しく調べることにより、活性酸素種の挙動を解析できるはずである。 Phe残存濃度の経時変化を、経験的な式-d[Phe]/dt=k[Phe]^n(I)にフィッティングすると、反応次数nはどの化合物についても1以下になる。Pheが分子状酸素によってのみ分解されるのであれば、基本的にnは1となるため、上記事実はPheの分解に活性酸素種が関与することを示唆する。一方、生成する活性酸素種の中には、Pheを攻撃するものがあるが、これらをそれぞれOX_1,OX_2,…,OX_n,…とすれば、Pheの分解速度は反応時間に依存する反応速度関数k(t)を用いて、-d[Phe]/dt=k[Phe][O_2]+k(t)[Phe]Σ[OX_n]で表せる。これは別の反応速度関数k(t)用いて、-d[Phe]/dt=k(t)[Phe](II)と整理できる。式(I)、(II)から、式k(t)=A/(t+B)(III)が得られる。これは双曲線であり、図示することにより活性酸素種の挙動が視覚化される。 式(III)を反応開始時に外挿することにより、Pheと分子状酸素との反応速度定数が計算でき、これはPheの持つ置換基に依存する。また、この反応速度定数からPheが溶液から消失する時間までに分子状酸素により分解されたPheを計算でき、これからPheのうち活性酸素種によって分解された量も計算できる。用いたPheのうち2,6-dimethylphenolを85℃で処理した場合に活性酸素種の分解への寄与が最も大きく、全体の約5%であった。
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