2005 Fiscal Year Annual Research Report
有明海の高濁度水塊における稚魚の摂食・生残戦略:行動学・化学生態学的アプローチ
Project/Area Number |
17780154
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小路 淳 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 研究員(COE) (10397565)
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Keywords | 有明海 / 筑後川 / スズキ / 生残 / 摂餌 / 高濁度水塊 / カイアシ類 / 成長 |
Research Abstract |
河口域に発達する高濁度水塊は被食シェルターとしての機能を備え,魚類の好適な成育場となり得る.このような環境下では,魚類幼期個体の主要な死亡要因のうち,「被食」に比べて「飢餓」や「移送」が加入量決定期までの減耗の主要因となる事例がいくつかの魚種で示されている.本年度は,筑後川河口域の高濁度水塊を成育場とするスズキの同一ふ化日コホートごとの死亡率を求め,その変動に対する河口域の物理・生物環境の影響を調べた. 筑後川の河口点の沖合い約10kmから上流約23kmにかけての水域において4-7日間隔で合計12回のサンプリングを行った.口径1.3m,目合い1mmの稚魚採集用ネットによりスズキ仔稚魚をサンプリングし,仔稚魚の耳石日周輪からふ化日を個体ごとに求めた。仔稚魚を5日ごとの同一ふ化日コホートに区分した.河口域へ加入する体長15mmから網口逃避率が小さいと報告されている20mmまでの体長範囲の個体について,分布密度の減少過程から各ふ化日コホートの死亡率を求め,物理(河川流量,水温)および餌料生物環境との関係を解析した. 解析に十分な個体数が得られた12月22日-2月4日のふ化日を持つスズキ仔稚魚を5日ごとに9つの同一ふ化日コホートとして区分した.水温,流量,餌料生物密度,摂餌量は後期ほど高い傾向にあった.後期ほど死亡係数は低下し重量成長係数および死亡係数に対する重量成長係数の比(生物量増減の指標)は上昇した.筑後川河口域においては,カイアシ類シノカラヌスを中心とする餌料プランクトンの後期におけるブルームに伴う餌料生物密度の上昇が初期死亡係数の低下に寄与したと考えられた.
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